いびき・SAS

「心臓がドキドキする」のは、夜の呼吸が原因かもしれない〜睡眠時無呼吸症候群と不整脈の意外な関係〜

「心臓がドキドキする」のは、夜の呼吸が原因かもしれない
〜睡眠時無呼吸症候群と不整脈の意外な関係〜

「心臓がたまにドキドキする」「脈が乱れる感じがする」——そんな症状を抱えながら、「でも昼間は眠くないし、いびきもないから大丈夫かな」と思っていませんか?実は、心房細動(不整脈の一種)と睡眠時無呼吸症候群(SAS)は深くつながっています。この記事では、その関係と最新の検査技術をわかりやすくお伝えします。

心房細動と睡眠時無呼吸、半数以上が一緒に持っている

イチ坊
下浦先生!最近、クリニックに「心臓がたまにドキドキする」って来る患者さん、多くないですか?
下浦
多いね。で、検査してみると「心房細動」って不整脈が見つかることがある。問題はそのあとなんだよ。
イチ坊
問題?治療すればいいんじゃないんですか?
下浦
そこが落とし穴でね。心房細動の患者さんって、半数以上が「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」も一緒に持ってるんだよ。
イチ坊
え、半数以上!?そんなに多いんですか!?
下浦
そう。カテーテルアブレーション(心房細動を治す手術)を受ける予定の患者さん197人を調べた研究では、なんと半数以上がAHI15以上、つまり中等度以上の睡眠時無呼吸を持ってたんだ。
イチ坊
AHIってなんですか?
下浦
……(どてー)

イチ坊、しっかりしてよ!睡眠学会認定技師でしょ!AHIは「Apnea Hypopnea Index」の略で、1時間あたりに呼吸が止まったり浅くなったりする回数のことだよ。15回以上で「中等度」。つまり、1時間に15回以上、息が詰まってるってこと。
イチ坊
さすがにわかってますよー!聞いてくれている皆さんが分かりにくいかなって思って聞いてみました💦毎晩息が止まっているってことですよね…それは確かにしんどい。

なぜ「眠れない」と「心臓がおかしくなる」がつながるの?

下浦
睡眠時無呼吸って、息が止まるたびに体がいろんなストレスを受けるんだよね。酸素が足りなくなる、血液中に二酸化炭素が増える、胸の中の圧力が大きく変わる…
イチ坊
それって心臓にも影響が出るんですか?
下浦
そう!その刺激が積み重なると、心房(心臓の上の部屋)が少しずつ傷んで、広がって、最終的に心房細動を起こしやすい状態になるんだ。
イチ坊
睡眠中の呼吸トラブルが、心臓の不整脈につながっちゃうんですね。じゃあSASを治したら不整脈も治るってこと?
下浦
まさにそこが大事でね。心房細動をカテーテルアブレーションで治療した後に、SASを放っておくと…再発リスクが2倍以上になるっていうデータがあるんだよ。(Fein AS et al, JACC 2013)
イチ坊
2倍!?せっかく手術したのに!?
下浦
ただ、これは裏を返すとチャンスでもあるんだよね。同じ研究で、SASがあってもCPAP(シーパップ:睡眠中に空気を送り込んで気道を広げる治療機器)をしっかりやっていた患者さんは、SASのない患者さんとほぼ同じくらいの再発率だったんだ。つまり、「SASがある=再発しやすい」じゃなくて、「SASがある+CPAP未治療=再発しやすい」ってことなんだよ。
イチ坊
じゃあCPAPをちゃんとやれば、SASがあっても再発リスクはぐっと抑えられるってことですか。
下浦
そういうこと。アブレーションとCPAP、両方の治療をセットで考えることが大事なんだよね。片方だけじゃもったいない。

「眠くない」から大丈夫、じゃないんです

イチ坊
でも、睡眠時無呼吸って「日中眠い」「いびきがひどい」って人がなるイメージがあります。心房細動の患者さんで、眠気ない人でも持ってるんですか?
下浦
これが厄介なところでね。SASって、自分では気づいていない人がすごく多い日中に眠気を感じない人でも、夜中に何十回も息が止まってたりする。
イチ坊
じゃあどうやって見つけるんですか?

ホルター心電図の進化と、CVHRIという新しい視点

下浦
そこでまず、ホルター心電図の話をしないといけないんだけど…イチ坊、ホルター心電図ってどんな検査か説明できる?
イチ坊
もちろんです!胸に電極を貼って、24時間心電図を記録する検査ですよね。
下浦
そう、正解。でも従来の24時間型ホルターって、実はなかなか大変でね。機械本体がそれなりに大きくて、患者さんは着けたまま帰宅して、翌日また来院して外してもらう。患者さんの手間も、解析する技師さんの手間もかかる。
イチ坊
確かに、着脱のたびに来院が必要だし、解析も結構な作業量ですよね。
下浦
でも最近は小型で薄い、シール状のホルター心電図が出てきてね。7日間とか14日間、連続して貼りっぱなしで記録できる機種もある。患者さんも負担が少ないし、長く記録できるぶん、見逃しも減る。
イチ坊
長く記録できるほど、不整脈が出るタイミングをとらえやすいですもんね。
下浦
そう。で、その長時間ホルターの普及と合わせて、最近注目されてるのが「CVHRI(心拍変動指数)」という解析なんだよ。
イチ坊
CVHRIって何をみるんですか?
下浦
原理の詳細はちょっと難しいから今日は割愛するけど、ひとことで言うと「心拍数の微細なゆらぎを見ることで、睡眠中の無呼吸の回数を推定できる」技術だよ。息が止まるたびに心拍のリズムがわずかに変化する。その周期的なパターンをコンピューターが自動で検出してくれるんだ。研究では、CVHRIとAHIの相関がとても高くて、感度83%・特異度88%という精度が確認されてる。
イチ坊
つまり…心電図を貼っておくだけで、不整脈の情報と、睡眠時無呼吸の情報が同時に取れるってことですか!
下浦
そういうこと!かなり使えるツールだよ。
イチ坊
似たような仕組みってどこかで聞いたことがある気がするんですが…
下浦
面白いところに気づいたね。実はスマートウォッチにも、睡眠時無呼吸の兆候を検出できる機種が出てきてるんだよ。
イチ坊
あ、最近そういう機能があるの見ました!でも、スマートウォッチって血中酸素の値が出るまで数十秒かかりますよね。1回ごとの無呼吸みたいな、数秒単位の酸素低下って追えるのかな…って思ってたんですが。
下浦
そこ、目のつけどころがいいよ。あの測定時間を考えると、細かい酸素変動をリアルタイムで追うのは難しいはずなんだよね。だからスマートウォッチが睡眠中の呼吸をとらえているとすれば、おそらくCVHRIと同じような「心拍のゆらぎ」を応用しているんじゃないかと考えられる。中身は非公開でブラックボックスだけどね。
イチ坊
身近なスマートウォッチにも、ホルターと似た原理が使われてるかもしれないって、なんかロマンがありますね。
下浦
そうだね。技術の方向性が、医療機器と民生機器でだんだん近づいてきてる感じがするよ。

不整脈の治療に「睡眠」を加えると、未来が変わる

イチ坊
心臓と睡眠って別物のイメージがあったけど、全然別じゃないんですね。
下浦
そうなんだよ。「夜に心房細動がよく出る」「脈が乱れることが多い」って人は、睡眠中の呼吸が関係してる可能性がある。不整脈だけを治しても、その根っこにあるSASを放置したままだと、また同じことが繰り返されやすい。
イチ坊
ちゃんと両方治せば、心臓にとっても体全体にとってもすごくプラスになるってことですね。
下浦
まさにそう。「心臓だけ診ればいい」じゃなくて、「眠れているか」「夜の呼吸は大丈夫か」まで含めて診る。それが、これからの不整脈診療の方向性だと思ってる。
イチ坊
心房細動の患者さんや、不整脈が気になってる人は、一度睡眠のことも相談してみたほうがいいですね!
下浦
そうだね。「いびきはないし、眠気もない」って人でも、かかりつけの先生に「睡眠についてどうですか?」って聞いてみると、新しい発見があるかもしれないよ。

心房細動と睡眠時無呼吸の関係、少しでも気になった方は、ぜひ一度専門医にご相談を。眠りを整えることが、心臓を守ることにつながります。

下浦雄大

下浦 雄大

日本睡眠学会認定 総合専門医
日本医師会認定 産業医

RESM新東京スリープメディカルケアクリニック
副院長

📋 この記事の執筆者はコチラ

睡眠専門医が、あなたの「眠れない」に答えます。

山梨大学医学部卒業後、循環器内科での臨床経験を経て睡眠医療へ転身。現在はRESM新東京スリープメディカルケアクリニック副院長として、睡眠・循環器・産業医の3領域で診療中。一般クリニックでは対応困難な「過眠症」や「概日リズム睡眠障害」まで、科学的根拠にもとづいた支援を行っています。


RESM新東京スリープメディカルケアクリニック 副院長 下浦 雄大 | 日本睡眠学会認定総合専門医  日本医師会認定産業医