先生、最近、朝がどうしても起きられないって高校生の女の子が来ていましたよね。お母さんも「怠けているんじゃないか」って心配していて。
そうだったね。でも実は、高校生のころに朝が弱くなるのは、ある意味で「正常」なんだよ。怠けているわけじゃなくて、体の仕組みが変わっているからなんだ。
体の仕組みが変わる? どういうことですか?
思春期になると、「眠くなるホルモン」であるメラトニンの分泌が始まる時間が大きく後ろにずれるんだよ。小学生のころと比べると、夜の眠気が来るのが明らかに遅くなる。だから夜更かしになりやスイくんし、朝も当然つらくなるんだ。
メラトニンってどうやって調べるの? DLMOという検査
メラトニンの分泌がずれているって、どうやって調べるんですか?
「DLMO(Dim Light Melatonin Onset/薄暗い光の中でメラトニンが上がり始める時刻)」という指標があってね、唾液や血液から測定できるんだよ。ただ、残念ながら今の日本では保険診療には採用されていないから、研究目的での採取しか行われていないのが現状なんだ。
じゃあ、一般の患者さんが自分のDLMOを調べることは難しいんですね……。
そうなんだ。ただ、あとで話す「質問紙」で代わりにある程度把握できるから、そちらを活用する方法があるよ。
年齢によってDLMOはどう変わる?
年齢とDLMOの関係をイメージ図にするとこんな感じだよ。
10代後半から20代前半が一番遅いんですね! 大人になったら自然に戻るってこと?
そうなんだよ。20代前半をピークに、その後は徐々にDLMOが前進(早まる)していく。さらに大人になるにつれて、起床時の自律神経の働きも整ってくる。そうなると血圧が朝にスムーズに上がって、目が覚めたときにすぐ動きやすくなるんだ。
「いつか治る」とは限らない──概日リズム睡眠覚醒障害とは
じゃあ、朝起きられなくても年を取れば自然に改善されるってことですか?
そうとも限らないんだよ。体内時計には年代による変化だけでなく、個人差がとても大きいからね。多くの人の体内時計はだいたい24〜25時間周期なんだけど、それより長い人がいて、いつも夜更かし方向にずれていく「睡眠相後退症候群」や、毎晩少しずつずれ続けて昼夜が逆転し続ける「非24時間睡眠覚醒リズム障害」を持つ人もいるんだ。
それだと学校や仕事に大きく影響しますよね……。
そうだね。睡眠・覚醒のリズムが社会生活に支障をきたす場合は、「概日リズム睡眠覚醒障害」として診断・治療の対象になるんだよ。思春期の朝の弱さとの区別が大切で、長期間・高度な障害が続く場合は専門医への相談をすすめているよ。
自分のクロノタイプを知ろう──質問紙とソーシャルジェットラグ
自分が朝型か夜型か、調べる方法はあるんですか?
2つ紹介するね。ひとつは「朝型夜型質問紙(MEQ)」で、いくつかの質問に答えるだけで自分のクロノタイプ(体質的な朝型・夜型の傾向)がわかる。もうひとつは「ミュンヘンクロノタイプ質問紙(MCTQ)」で、こちらは平日と休日の就寝・起床時間の違いを比べることで、社会生活で無理をしている度合いを測れるんだ。実はこちらのほうが、DLMOとの相関がより強いと言われているんだよ。
平日と休日で睡眠時間が違うのって、よくある話ですよね。それって問題なんですか?
この平日と休日の「睡眠の中央値のずれ」を「ソーシャルジェットラグ(SJL)」と呼ぶんだ。近年、SJLは睡眠時間と同じくらい重要な健康指標として注目されていてね。SJLのずれが大きい人ほど、死亡リスクや生活習慣病のリスクが高まることが研究で明らかになってきているんだよ。
寿命にまで関係するんですか!?
そうなんだよ。さらに、2025年には筑波大学の柳沢正史先生のグループが、あのポケモンスリープのアプリのデータを解析した研究を発表していてね。SJLのずれが大きいグループほど日中の生産性が低下していたという結果が報告されているんだ。
(参考:Yanagisawa M, et al. 2025, 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構)
(参考:Yanagisawa M, et al. 2025, 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構)
「週末だけ遅く起きる」っていうのも、体にはジェットラグと同じダメージがあるってことですね。自分のクロノタイプ、ちゃんと知っておいたほうがよさそうですね。
そのとおり! まずは自分の体質を知ることが第一歩だよ。国立精神・神経医療研究センターのHPから、クロノタイプの質問紙に無料でアクセスできるから、ぜひ試してみてね。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療上のアドバイスではありません。体調に不安がある場合は、必ず担当医師にご相談ください。

