情動脱力発作(カタプレキシー)
笑う、喜ぶ、驚くなどの感情をきっかけに、膝ががくっとする、首や顔の力が抜ける症状です。通常、意識は保たれます。
HYPERSOMNIA
過眠症・ナルコレプシー
十分に眠る時間があっても眠気が続くときは、睡眠不足以外の原因も考えます。眠気が出る場面と普段の睡眠を整理し、学校や仕事での困りごとを一緒に考えます。
症状を知る
睡眠時間が足りているか、夜の眠りが妨げられていないかを確認します。眠気をこらえられない場面を具体的に教えてください。

「夜は十分に寝ているのに、授業や会議でどうしても眠ってしまう」「眠気をこらえられず、日中の予定を続けられない」。このような生活に支障をきたす日中の眠気が、過眠症を考える入り口です。体のだるさに加え、どんな場面で眠り込みそうになるか、実際に眠ってしまうことがあるかを伺います。[1・2]
睡眠日誌や必要な検査を通して、夜にどれくらい眠れているかを確かめます。夜の睡眠を妨げる病気を除外し、ある場合は適切に治療したうえで、生活リズムや薬の影響なども整理します。十分な睡眠を確保しても眠気が続くときは、ナルコレプシーや特発性過眠症などを考えます。[2・4]
目指すのは、昼間に困っている症状を軽くし、授業・仕事・日常生活を支えることです。「もっと寝ればよい」「気合いで起きる」と片づけず、眠気が出る場面に合わせた対処を一緒に考えます。ナルコレプシーでは、夜中に何度も目が覚めることもあります。[1]
昼食のあとに眠くなると、食べたことが原因と思いがちです。でも、昼すぎの眠気は、昼食をとらなくても起こります。「アフタヌーン・ディップ」と呼ばれる、眠りやすい時間帯があるためです。
眠りを考える基本が「2プロセスモデル」です。起きている間に増える睡眠圧(Process S)と、時刻に応じて覚醒や睡眠を支える体内時計(Process C)が、組み合わさって働きます。

十分に眠れた朝は睡眠圧が低く、起きて活動するうちに目がさえてきます。昼すぎには眠りやすさが一度高まり、夕方〜夜の初めには体内時計の覚醒作用が強くなるため、眠りにくくなることがあります。この時間帯が「睡眠禁止帯(覚醒維持帯)」です。
その後、いつもの就寝時刻に近づくと覚醒を支える力が弱まり、たまった睡眠圧に応じて眠りにつきやすくなります。夜に眠ると睡眠圧が下がり、次の朝につながります。
軽い昼すぎの眠気は自然なリズムでも起こります。一方、会議や運転中に眠ってしまう、十分寝ても強い眠気が続くときは、原因を調べることが大切です。強い眠気があるときは運転を控え、受診時にお伝えください。
眠気による生活の困りごと
「朝起きられず授業に遅刻する」「授業中に眠ってしまい、内容が抜けてしまう」「仕事中に居眠りしてしまう」。こうした具体的な困りごとは、治療や支援を考える大切な情報です。いつ・どのような場面で困るかを教えてください。[1・4]

起床や登校の難しさ、授業中の居眠り、試験への影響を共有します。必要に応じて、ご本人の希望を踏まえ、学校との情報共有や仮眠・休憩の取り方を相談します。
居眠り運転や作業中のヒヤリとした経験もお知らせください。強い眠気がある状態では無理に運転しないでください。勤務内容や休憩、治療後の評価について相談します。
症状を知る
ナルコレプシーの代表的な症状は、次の「4徴」です。全員に4つすべてがそろうわけではありません。金縛りや夢のような体験だけで、この病気と決まるものでもありません。[1・4]
笑う、喜ぶ、驚くなどの感情をきっかけに、膝ががくっとする、首や顔の力が抜ける症状です。通常、意識は保たれます。
起きていたいのに耐えがたい眠気が出て、授業中や会話中などにも眠ってしまうことがあります。
寝入りばなに、人の気配や声などを現実のように感じる、鮮明な夢のような体験です。
寝入りばなや目覚めるときに、意識はあるのに一時的に体を動かせなくなることがあります。
病型を見分ける大切な手がかりが、情動脱力発作の有無です。典型的には、情動脱力発作があるのがタイプ1、ないのがタイプ2です。タイプ1では、覚醒を安定させるオレキシンの不足が関係します。発作がまだ明らかでなくても、髄液中のオレキシン低値によりタイプ1と診断される場合があります。症状だけでなく検査結果も合わせて判断します。[4・5]
症状を知る
長く眠っても眠気が残る、朝起こされても意識がはっきりするまで時間がかかる、昼寝の後もすっきりしないといった訴えがあります。目覚めた後の強いぼんやり感は睡眠慣性と呼ばれます。すべての人が長時間眠るわけではなく、ほかの病気や睡眠不足などを除外して評価します。[4]
診察・検査を知る
開院後のMSLT・MWTは、専門検査に対応する医療機関へ紹介する方針です。ナルコレプシー・過眠症の診断のためのMSLTや、治療後の覚醒状態を確認するMWTが必要な場合は、入院検査に対応する医療機関へ紹介する方針です。MSLTは原則として前夜の施設内PSGに続けて行います。MWTを含め、実際の検査日程や入院の要否は紹介先で確認します。
紹介先の検査結果と診断・治療方針を確認したうえで、継続する薬物治療や経過観察をどこで行うか、受入体制と病状に応じて相談する方針です。病状やお薬の処方条件に応じて、必要な医療機関と診療を分担する方針です。
「どのくらい眠りやすい?」
日中に複数回、横になって眠る機会を設け、寝つくまでの平均時間と、眠り始めてすぐにレム睡眠が現れる回数(SOREMP)を調べます。ナルコレプシーのタイプ1・タイプ2、特発性過眠症の確定診断に用いる中心的な検査です。症状や睡眠記録などと合わせて診断し、MSLTの数値だけでは決めません。[2・4・6]
「どのくらい起きていられる?」
静かで薄暗い環境で、眠らずにいられる時間を調べます。過眠症・ナルコレプシーの薬物療法や、睡眠時無呼吸症候群のCPAP療法などで、日中の覚醒がどの程度保てるようになったかを評価する材料になります。[2・7]
MWTは、診断を受けた方のお薬の効果を調べる場合や、職業ドライバーなどの運転免許更新時に必要とされる場合にも行われます。全員の免許更新で必須の検査という意味ではありません。検査結果だけで運転の安全を保証するものではなく、日中の症状、治療の継続状況、睡眠不足の有無、運転・仕事の内容も合わせて包括的に判断します。[2・6]
ナルコレプシーとの違いを調べる手がかりが、入眠時REM睡眠(SOREMP)です。眠りに入ってから15分以内という早い段階でREM睡眠が現れる所見を指します。ナルコレプシーではこれが繰り返し見られることが特徴です。[4・5]
3つの病気の診断を比べる
| 比較する項目 | ナルコレプシー タイプ1 | ナルコレプシー タイプ2 | 特発性過眠症 |
|---|---|---|---|
| 日中の強い眠気 | あり | あり | あり |
| MSLTの 平均睡眠潜時 | 8分以下 MSLTで診断する場合 | 8分以下 | 8分以下 または24時間の総睡眠時間が11時間以上※ |
| 入眠時REM睡眠 (SOREMP) | 2回以上 MSLTで診断する場合※ | 2回以上 前夜の所見を1回分に数える場合あり※ | 0〜1回 ナルコレプシーの検査基準を満たさない |
| 情動脱力発作 (カタプレキシー) | ○ あり 典型例。例外あり※ | - なし | - なし |
※ 平均睡眠潜時は、検査中に寝つくまでの時間の平均です。短いほど眠りやすく、診断基準では8分以下を用います。特発性過眠症は、所定の方法で24時間の総睡眠時間が11時間以上と確認される場合、MSLTが8分を超えていても診断されることがあります。
※ タイプ2では、前夜の睡眠検査のSOREMPをMSLTの1回分として数えられます。タイプ1は、典型的な情動脱力発作+夜間睡眠検査のSOREMP、または髄液オレキシン低値による診断経路もあり、MSLTでの短縮やSOREMP複数回がすべての患者さんに必須とは限りません。
表は主な違いの要約です。症状の持続期間、十分な睡眠の確保、ほかの原因の除外なども含めて診断します。[4・5]
診察・検査を知る
寝た時刻や昼寝の記録、飲んでいる薬の情報が役立ちます。検査に向けた調整は医師と相談して進めます。
寝た時刻・起きた時刻・昼寝・日中の眠気を、平日と休日を含めて記録します。通常は検査前の約2週間を目安に、必要に応じて活動量計の記録も使い、十分な睡眠時間と安定した生活リズムを確認します。検査直前だけ睡眠を増やすのではなく、普段の状態を把握することが大切です。[2]
MSLTでは、検査前の睡眠や生活リズムも結果に影響します。交代勤務や徹夜の直後、慢性的な睡眠不足がある状態では、本来とは異なる眠気のパターンが現れることがあります。検査前の睡眠記録や服薬情報をもとに、適切な日程・条件を相談します。[2]

カフェインを含むコーヒーやエナジードリンク、睡眠薬、抗うつ薬、覚醒を促す薬などは、眠りやすさやREM睡眠の出方に影響することがあります。普段の摂取量や服薬内容をお知らせください。減量・休薬やカフェインの調整が必要かどうかは、医師が安全性を考えて計画します。[2]
薬の種類や検査の目的によっては、検査の一定期間前から、減量や休薬が必要になる場合があります。休薬が必要な場合は、薬ごとに中止する時期を決めます。
診察でもお薬を確認し、検査に向けた調整についてご説明します。自己判断で中止せず、かかりつけの処方医と「安全に休薬できるか」を十分にご相談ください。急にやめると体調が悪くなったり、眠りの変化が検査結果に影響したりすることがあります。
お薬手帳に加え、市販薬や頓服のお薬もお知らせください。休薬が難しい場合は、そのことも含めて検査担当医へお伝えください。検査の時期や方法、結果の読み方を一緒に考えます。
治療中の覚醒状態を調べるMWTでは、普段のお薬を続けて評価する場合があります。検査ごとの指示をご確認ください。

いつから、どのような症状で困っているか、普段の睡眠時間・生活リズム、服用中の薬やサプリメントを整理しておくと診察の助けになります。睡眠日誌や過去の検査結果があれば、あわせてご相談ください。
検査の数値が診断基準に合うかだけでなく、症状の経過、昼寝による変化、起床時の困難さなどと合わせて診断します。結果と普段の状態が合わないときも、その違いを診察で伝えてください。[2]
治療・その後を知る
眠気を和らげる薬だけでなく、睡眠の取り方や学校・職場での工夫も組み合わせます。

思春期から若い成人期に症状が始まることも多く、学業や就職など大切な時期の生活に影響することがあります。年齢を問わず、「起きていたいときに起きていられる」「朝の支度ができる」など、患者さんごとの目標を共有します。[1・4]
原因となる睡眠不足やほかの睡眠障害があれば、その対応を優先または並行します。ナルコレプシーなどでは、規則的な睡眠、計画的な短い仮眠、眠気や脱力発作に対する薬物療法を組み合わせます。薬の選択は診断、併存疾患、年齢などによって異なります。特発性過眠症では仮眠ですっきりしないこともあるため、生活の工夫も個別に相談します。[1・3・4]
生活リズムの調整や必要な仮眠などと組み合わせ、次のような薬を使うことがあります。
診断による薬の国内承認適応の違い
| 比較する項目 | ナルコレプシー タイプ1 | ナルコレプシー タイプ2 | 特発性過眠症 |
|---|---|---|---|
| 治療薬の国内承認適応(一般名・商品名) | |||
| オベポレクストン商品名:オーゼイフル承認済み・発売準備中※ | ○ 適応ありナルコレプシータイプ1 | - 適応なし | - 適応なし |
| モダフィニル商品名:モディオダール | ○ 適応あり日中の過度の眠気 | ○ 適応あり日中の過度の眠気 | ○ 適応あり日中の過度の眠気 |
| メチルフェニデート 塩酸塩商品名:リタリン(ナルコレプシー用の通常錠) | ○ 適応ありナルコレプシー | ○ 適応ありナルコレプシー | - 適応なし |
※ オベポレクストンは発売準備中です。[14] 薬の○は、上記3疾患における国内承認適応を示します(2026年9月25日確認)。処方する薬は、症状や持病、ほかの薬との飲み合わせに応じて選びます。モダフィニルは日中の過度の眠気を対象とし、カタプレキシーへの効果は認められていません。メチルフェニデート塩酸塩は製剤により適応が異なります。[8〜10]
モダフィニルと、ナルコレプシーに用いるメチルフェニデート塩酸塩の通常錠には、適正使用・流通管理のための登録制度があります。それぞれの委員会の基準に沿って、医師・医療機関・薬局・調剤責任者などが事前に登録される必要があり、どの医療機関・薬局でも処方・調剤できるわけではありません。薬局では処方医師・医療機関の登録を確認して調剤します。受診先や薬の受け取り先は、事前にご確認ください。[11・12]
オベポレクストンは、上記2剤とは適正使用の仕組みが異なります。確認した国内承認資料には、上記2剤と同様に登録医師・登録薬局に限定する制度は記載されていません。ただし、ナルコレプシータイプ1の病態・診断・治療に精通した医師、またはその医師との連携のもとで使用することが求められます。[13]
※ オベポレクストンは2026年9月25日の公式製品情報で「発売準備中」です。承認適応があることと、実際に処方を開始できる時期は別であり、発売・薬価収載、医療機関での採用や薬局の取り扱いを確認します。[14]
治療後も眠気、起床のしやすさ、副作用、学業・仕事での困りごとを継続して確認し、日中の生活を支えられているかを評価します。薬の選択や変更は、診断、年齢、併存疾患、併用薬などを踏まえて医師と相談します。[3]
はい。処方薬だけでなく、市販薬や頓服もお知らせください。自己判断で中止せず、検査前の薬の確認と調整方法をご覧ください。
睡眠不足であれば改善する可能性がありますが、十分な睡眠を確保しても強い眠気が続く場合は別の原因を評価します。寝た長さだけでは決まりません。
金縛りはほかの状況でも起こります。日中の眠気、脱力発作、睡眠の経過などと合わせて判断します。
検査条件や結果の解釈に影響する可能性があります。担当者に伝え、必要なら延期・再評価を検討します。
検査は判断材料の一つです。その日の睡眠不足、症状、治療状況、仕事の内容なども含めた評価が必要です。
一般的な疾患・検査・治療の説明です。実際の診断や治療は個別の状態により異なります。
AASM 成人MSLT/MWTプロトコル2021(検査準備・結果の解釈)
AASM 中枢性過眠症治療ガイドライン2021(疾患別治療)
Hypersomnia Foundation:ICSD-3-TR診断基準の要約
基本の2プロセスモデルは、睡眠圧と概日リズムの相互作用で睡眠・覚醒を説明します。この図は、起床後から就寝前の2つの働きを重ねた模式図です。線の高さや縦の開きは、実測の眠気の大きさやモデルの計算結果ではありません。午後の眠気を単純な引き算だけで説明することはできず、約12時間周期の成分や、拡張された眠りやすさのモデルも研究されています。起床直後に頭が働きにくい「睡眠慣性」も別に関わります。
当院の診療対象は13歳以上(中学生以上)です。2027年春ころ、武蔵小杉駅周辺での開院を予定しています。
会議や授業で眠ってしまう、十分寝ても起きられないなどの困りごとを伺う予定です。MSLT・MWTなどの専門検査が必要な場合は、対応する医療機関へ紹介する方針です。検査後の通院先は、結果と処方条件を確認して相談します。
入院PSG・MSLT・MWTなどの専門検査が必要な場合は、医療法人RESMなど、対応する医療機関へ紹介する方針です。