検査・治療

睡眠薬は危険?依存・副作用と正しい使い方

ZZZ.LAB / SLEEP MEDICINE

「睡眠薬は一度飲むとやめられない?」「長く飲むと認知症になる?」。そんな不安を抱えていませんか。睡眠薬には種類ごとの違いがあり、使い方を定期的に見直すことが大切です。動画の内容をもとに、依存・副作用から減薬、薬以外の治療まで、下浦・イチ坊・スイくんが順番に解説します。

動画でも解説しています。YouTubeで見る ↗
イチ坊
外来の準備でお薬手帳を見ていると、睡眠薬の名前がたくさん出てきます。まず、どこを確認すればいいんですか?
スイくん
名前だけでなく、飲む量と時刻、続けている期間も確認するといいよ。先生、今日はその読み方から教えていただけますか?
下浦
もちろん。睡眠薬は「全部同じ」ではないんだ。どんな困りごとに使っていて、どのくらい役立ち、どんな負担があるか。一つずつ整理してみよう。
イチ坊
薬の名前の長さで、強さがわかったりは……しませんよね?
下浦
そこは文字数勝負じゃないよ(笑)。働き方と、その人の状態を見るんだ。

01 睡眠薬は一括りにできない。4つの種類

睡眠薬は、眠れない状態を改善するための治療の一つです。ただし、「寝つけない」のか、「夜中に何度も起きる」のか、翌日の生活にどう影響しているかによって、選び方は変わります。まずは動画で取り上げた代表的な4つのグループを比べてみましょう。

水の入ったグラスと、そばに置かれた薬のイラスト
睡眠薬は、働き方と注意点を分けて比べることが大切です。
ZZZ.Labの固定ページで使用している説明用イメージです。

TYPE 01

ベンゾジアゼピン系

例:トリアゾラム

主な働き方
脳の活動を抑えるGABAという物質の働きを強める
確認したい注意点
依存・耐性、眠気、ふらつき、記憶への影響に注意

TYPE 02

非ベンゾジアゼピン系(Z薬)

例:ゾルピデム、エスゾピクロン

主な働き方
同じくGABAの働きを強める。化学構造などが異なる
確認したい注意点
「非」という名前でも、依存や健忘などへの注意は必要

TYPE 03

オレキシン受容体拮抗薬

例:スボレキサント、レンボレキサント

主な働き方
覚醒を保つオレキシンの信号を弱める
確認したい注意点
翌日の眠気、悪夢などに注意。併用薬の確認も大切

TYPE 04

メラトニン受容体作動薬

例:ラメルテオン

主な働き方
睡眠・覚醒リズムに関わるメラトニンの受容体に働く
確認したい注意点
主に寝つきの改善に用いる。眠気や飲み合わせに注意

※代表例です。すべての薬を網羅した一覧ではありません。[1][2][3]

イチ坊
「非ベンゾジアゼピン」なら、ベンゾジアゼピンとは全然別の仕組みなんですか?
下浦
名前は違っても、GABAの働きを強める点では共通しているんだ。Z薬も依存や記憶への影響がなくなるわけではないよ。お薬手帳では、商品名に加えて成分名を確認すると整理しやすいね。

オレキシン受容体拮抗薬とメラトニン受容体作動薬は、従来の薬とは異なる仕組みを持ちます。ベンゾジアゼピン系で問題になる依存・耐性が起こりにくいという特徴がありますが、薬ごとの副作用や、併用できない薬もあります。「新しいから誰にでも合う」「自然な眠りに近いから副作用がない」とは言い切れません。

スイくん
検査前の聞き取りでも、同じ薬を飲んでいる方の中に、朝すっきりする方と眠気が残る方がいますよね。
下浦
そうだね。年齢や体調、ほかの薬、睡眠時間によっても変わる。「一番強い薬」より、その人に合う薬と量かを考えることが大事なんだ。

02 依存・耐性・反跳性不眠は、どう違う?

「やめられない」という言葉の中には、いくつかの異なる状態が含まれます。毎晩薬を飲んでいるという事実だけで、依存と決めつけることはできません。一方で、指示どおりの量でも、ベンゾジアゼピン系やZ薬を長く使ううちに身体依存が生じる場合があります。

イチ坊
服薬期間が長い方の問診では、「依存していますか」と聞くより、具体的な変化を聞いた方がよさそうですね。
下浦
その通り。効き方が変わったか、量が増えたか、飲み忘れたときに何が起きたかを聞くんだ。責めるためじゃなく、安全に治療を続けるための確認だよ。

不安、いらいら、ふるえなどが離脱症状として現れることもあり、急な中止では重い症状につながる場合があります。また、「薬がないと眠れない気がする」という不安も、治療で扱う大切なテーマです。身体依存は、意志が弱いことや、必ず薬を乱用していることを意味しません。[1]

イチ坊
チェック項目を増やせば、僕の問診にも耐性がついて、速くなりますか?
下浦
そっちは「慣れ」だね(笑)。まずは一つずつ丁寧に。減らした直後に眠れなかったからといって、「一生やめられない」と決まったわけではないんだ。

眠れなくなった理由は、反跳性不眠だけとは限りません。元の不眠が続いている場合や、生活の変化が重なった場合もあります。自己判断で増量や中断を繰り返すより、起きたことをメモして主治医と共有する方が、次の調整に役立ちます。

03 副作用は「夜に眠れたか」だけでは判断しない

スイくん
夜の検査が終わったあとも、起床時の様子は気になります。眠れたと話されていても、歩くときにふらつく方がいらっしゃいますよね。
下浦
そうなんだ。治療の目標は夜に眠ることに加えて、日中を安全に過ごせること。朝の眠気や注意力、転倒の有無も確認してほしい。

睡眠薬の作用が翌朝以降に残ることを「持ち越し効果」と呼びます。ぼんやりする、集中しづらい、反応が遅くなるといった形で現れます。高齢の方や、薬を分解・排泄する機能が低下している方、眠気を起こす薬を複数使っている方では、特に注意が必要です。

ベンゾジアゼピン系などでは、筋肉を緩める作用や眠気によって転倒しやすくなることがあります。夜間のトイレ移動も含めて確認しましょう。また、服用後の出来事を覚えていない「健忘」や、十分に目覚めないまま行動する症状も、相談が必要な変化です。

  • 翌朝の眠気やふらつきが強い、転びそうになった
  • 服用後の会話・食事などを覚えていない
  • 家族から、夜間の普段と違う行動を指摘された
  • 仕事や運転に支障を感じる、日中の集中力が落ちた
イチ坊
朝のチェックは、眠そうな顔をしているかどうかだけでは足りないんですね。
下浦
顔つきだけで合否判定しないでね。本人が感じていること、実際に起きたことを聞こう。新しいタイプの薬でも翌日の眠気は起こりうるよ。

運転に関する注意は薬剤によって異なります。添付文書と医師・薬剤師の説明を確認し、眠気や判断力の低下があるときは運転や危険な作業をしないでください。飲酒との併用や、眠れないからと決められた量を超えて追加することも避けましょう。[2]

04 睡眠薬と認知症。研究からわかること・わからないこと

イチ坊
薬のあとに「ぼんやりする」という話と、「認知症になる」という話は、同じ欄に記録していいんですか?
下浦
そこは分けよう。薬による一時的な眠気や記憶への影響と、認知症という病気は同じではないんだ。症状がいつから、どんな場面で起きたのかが大事だよ。

ベンゾジアゼピン系の使用と認知症の関連を調べた研究では、関連がみられた報告と、全体として明確な関連がみられなかった報告があります。2014年の高齢者を対象とした研究では関連が報告されましたが、2024年の住民追跡研究では、使用歴全体と認知症発症との明確な関連は示されませんでした。[4][5]

読み解くうえで大切なのは、「関連がある」ことと「薬が原因で発症した」ことを分けることです。不眠や不安が認知症の診断前から現れ、その症状に対して薬が処方される場合もあります。年齢、病気、生活習慣などの影響も重なり、観察研究だけで原因を確定することは困難です。

スイくん
動画で出てくるリスクの数字も、すべての睡眠薬を飲む人に、そのまま当てはめることはできないんですよね。
下浦
そうだね。調べた人や薬、服用期間、研究方法が違うからね。数字だけで怖がって急にやめるのではなく、今の薬が必要か、副作用がないかを見直すことにつなげてほしい。

一方で、「認知症との因果関係がはっきりしないなら、何年飲んでも問題ない」とも言えません。依存、転倒、日中の認知機能への影響など、別の注意点は残ります。物忘れが続く場合も、薬のせいと決めつけず、薬以外の原因を含めて診察で相談しましょう。

05 長く飲んでいる薬は、主治医と見直す

イチ坊
長期服用の方のお薬手帳を見たら、「今日から減らしましょう」と先にお伝えしてもいいですか?
下浦
そこは先走らないでね。まずは医師につなごう。今の不眠の程度、薬の種類や量、期間、これまで減らした経験を確認してから考えるんだ。

薬を続ける必要性は、初めて処方されたときと同じとは限りません。ストレスが落ち着いていることもあれば、痛み、気分の落ち込み、睡眠時無呼吸、生活リズムのずれなどが眠りを妨げていることもあります。「薬が足りない」と考える前に、不眠の背景を見直すことが大切です。

そのうえで、現在の薬を継続する、量を調整する、別の仕組みの薬への変更を検討する、薬以外の治療を組み合わせるなどの選択肢を相談します。すべての人が同じ方法で薬を減らすわけではありません。切り替え時に複数の薬が重なると、眠気が増すことにも注意が必要です。

イチ坊
減薬は、カレンダーにゴールの日を大きく書けば順調に進みますか?
下浦
気合いの締め切りは作らなくていいよ(笑)。眠りと日中の状態を見ながら、ペースを調整するんだ。うまく眠れない日があったときの連絡先や対応も、先に相談しておこう。

特にベンゾジアゼピン系やZ薬を長期間使用している場合は、急な中止を避け、必要に応じて少しずつ減らします。減らす量や間隔は個別に決めます。ここでは一律の減薬スケジュールを示しません。服用が長い方ほど、自己流で急いでやめずに、相談の時間を確保してください。

06 薬以外の治療、CBT-Iという選択肢

睡眠日誌とペンを置いた明るい机
睡眠日誌で、夜の眠りと翌日の状態を一緒に振り返ります。
ZZZ.Labの固定ページで使用している説明用イメージです。

CBT-Iは「不眠症に対する認知行動療法」のことです。眠りに関する考え方や行動を見直し、不眠が続く悪循環をほぐす治療です。成人の慢性不眠症に対して、米国睡眠医学会のガイドラインは、複数の技法を組み合わせたCBT-Iを強く推奨しています。[6]

イチ坊
検査前の説明で、「眠れると信じて頑張りましょう」と励ますのもCBT-Iですか?
下浦
それだと、かえって頑張らせすぎちゃうかもね。根性で眠る治療ではないんだ。「眠らなきゃ」という緊張や、眠れないまま長くベッドにいる習慣を、一緒に見直していくよ。

たとえば、「8時間眠れなければ明日は何もできない」と考えるほど、時計が気になって眠りから遠ざかることがあります。CBT-Iでは、その考えを無理に否定するのではなく、睡眠日誌や実際の生活と照らし合わせながら、より柔軟な捉え方を探します。

CBT-Iで扱うことの例

  • 眠りの記録:睡眠日誌で就床・起床、目覚め、昼寝などを振り返る。
  • ベッドと睡眠の結びつき:ベッドで眠れずに悩む時間を減らす工夫をする。
  • 睡眠スケジュール:実際の眠りに合わせて、ベッドで過ごす時間を調整する。
  • 考え方と緊張への対応:眠りへの思い込みや焦りを扱い、リラックス法なども組み合わせる。

就寝前のカフェインや寝室の環境を整える「睡眠衛生」も大切ですが、それだけでCBT-Iのすべてを行ったことにはなりません。また、ベッドで過ごす時間を調整する方法は、自己流の極端な睡眠制限とは異なります。日中の強い眠気や持病、仕事の安全性を踏まえ、専門家と進めます。

スイくん
睡眠日誌は、薬を飲んだ時刻や翌日の状態も合わせると、診察で変化を確認しやすいですよね。
下浦
そうだね。そしてCBT-Iと薬は、併用できる治療だよ。薬でつらい時期を支えつつ、眠りを妨げる習慣や不安にも働きかける。「薬を飲んでいるから受けられない」と思わなくていいんだ。

治療を受けられる場所や方法は医療機関によって異なります。興味があれば、「不眠の認知行動療法を相談できますか」と主治医に尋ねてみてください。記録の付け方は、睡眠日誌のコラムでも紹介しています。

07 次の診察では、この5つを伝えてみよう

明るい診察室で医師と患者が話す様子
気になっていることを整理して、主治医と治療を見直しましょう。
ZZZ.Labの固定ページで使用している説明用イメージです。

「睡眠薬が怖い」「できれば減らしたい」という気持ちも、そのまま相談して構いません。薬の名前だけでなく、困っていることを具体的に伝えると、治療を見直しやすくなります。お薬手帳に加えて、次の項目を簡単にメモしておくのがおすすめです。

  1. 何を、どのくらい、いつから飲んでいるか。市販薬やサプリメントも含めて伝える。
  2. どの眠りに困っているか。寝つき、夜中の目覚め、早朝の目覚めを整理する。
  3. 翌日の状態はどうか。眠気、ふらつき、物忘れ、仕事への影響を伝える。
  4. 飲み忘れや減量で何が起きたか。自分で量を変えたことも、隠さず共有する。
  5. これからどうしたいか。減薬への希望や不安、CBT-Iへの関心を相談する。
イチ坊
問診のメモは「効いた・効かない」の二択では、もったいないですね。
下浦
そう。夜の眠りと昼の生活を、セットで見よう。薬を必要以上に怖がることも、自己流で使うことも避けて、今の自分に合った治療を相談してほしい。

眠れないつらさや薬への不安を、一人で抱え込む必要はありません。まずは現在の処方元に、眠りと日中の様子を伝えてみましょう。初めて相談する方は、睡眠外来の初診の流れも参考にしてください。

参考資料・動画について

指定動画の内容をもとに、一般向けに再構成しています。研究の数値は対象や方法によって異なるため、本記事では特定の倍率をすべての服用者へ当てはめずに説明しています。資料確認:2026年9月。

  1. PMDA:ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性について(2024年5月)
  2. PMDA掲載:デエビゴ適正使用ガイド
  3. PMDA:ロゼレム錠8mg 電子添文
  4. Billioti de Gage S, et al. BMJ. 2014;349:g5205. ベンゾジアゼピンとアルツハイマー病の症例対照研究
  5. BMC Medicine. 2024;22:266. ベンゾジアゼピンと認知症・脳画像に関する住民追跡研究
  6. Edinger JD, et al. J Clin Sleep Med. 2021;17:255–262. 成人慢性不眠の行動・心理療法ガイドライン

本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療上のアドバイスではありません。薬の服用中の運転については、必ず担当医師にご相談ください。

本記事は個別の診断・処方変更に代わるものではありません。薬の開始・増減・中止は、担当医師や薬剤師に相談してください。

下浦雄大

下浦 雄大

日本睡眠学会認定 総合専門医
日本医師会認定 産業医

RESM新東京スリープメディカルケアクリニック
副院長

📋 この記事の執筆者はコチラ

睡眠専門医が、あなたの「眠れない」に答えます。

山梨大学医学部卒業後、循環器内科での臨床経験を経て睡眠医療へ転身。現在はRESM新東京スリープメディカルケアクリニック副院長として、睡眠・循環器・産業医の3領域で診療中。一般クリニックでは対応困難な「過眠症」や「概日リズム睡眠障害」まで、科学的根拠にもとづいた支援を行っています。


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RESM新東京スリープメディカルケアクリニック 副院長 下浦 雄大 | 日本睡眠学会認定総合専門医  日本医師会認定産業医

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