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年代・ライフステージと眠り

夜中に何度も起きる|高齢期の眠りと対策

夜中のトイレ、朝早い目覚め、家族に言われる大きな寝言。年齢とともに眠りは変わりますが、困っている症状を一つずつ確かめると、生活の工夫や治療につながることがあります。

夜中に目覚めた女性と、日中に友人と散歩する高齢女性。

睡眠ガイド2023から

高齢期の眠り|床上時間と日中の活動を見直す

厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」の高齢者版をもとに、生活で確かめたい点をまとめました。

1.若い頃と同じ眠りを目標にしなくてよい

年齢を重ねると、眠る・起きる時刻が早まり、睡眠が途中で切れやすくなる傾向があります。必要な睡眠時間や、続けて眠れる長さも変化します。若い頃の睡眠をそのまま取り戻そうとして早く床に入ると、寝床で起きている時間が増えることがあります。大切なのは、眠りの長さだけでなく、朝に休めた感じがあり、日中の生活が保たれているかを見ることです。急な変化やつらい症状まで加齢だけで片づける必要はありません。

年齢とともに深い睡眠が減り、夜中に目が覚めやすくなる傾向があります。下の図は、脳波で測った年齢ごとの平均です。眠りの内訳と、寝床で過ごした時間の違いを示しています。

年齢別の平均睡眠時間と睡眠段階。加齢とともに深睡眠が減り中途覚醒が増える傾向。睡眠と床上時間は異なる。
健康づくりのための睡眠ガイド2023より(厚生労働省)。原資料を見る(PDF) · 図を拡大する

図中の「65歳・6.0時間」は平均値で、全員の目標ではありません。休めた感じや日中の調子も合わせて確認します。急に眠りが変わった、強い眠気や生活への支障が続く場合は、年齢だけで片づけず相談してください。

2.「床にいた時間」と「眠った時間」を区別する

高齢者版は、床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠を確保するよう勧めています。床上時間とは、寝床で目が覚めている時間も含む長さです。「8時間眠ってはいけない」という意味ではありません。まず一週間ほど、床に入った時刻、起床時刻、眠っていたと思う時間を分けて記録します。ガイドには平均睡眠時間に30分程度を足す考え方もありますが、個人差や体調を踏まえ、機械的に短くしないことが大切です。

記録には、スマートフォンで使える「わたしの睡眠日誌」も利用できます。寝床にいた時間と眠った時間を振り返り、診察では「医師に見せる・印刷」の画面を共有してください。細かな時刻が分からない日は、おおよその記録で構いません。

3.長く横になれば、休養が増えるとは限らない

退職などで時間の使い方が変わると、身体が必要とする睡眠に対して、寝床で過ごす時間が長くなる場合があります。眠れない時間が増え、休めないためさらに早く床に入る、という循環が生じることもあります。長い床上時間と休養感の乏しさは健康との関連が報告されていますが、病気のために横になる必要がある方もいます。研究結果を理由に療養や休息を削らず、持病、活動量、眠気に合わせて主治医と調整します。

床上時間には覚醒時間も含まれる。睡眠時間と分けて記録し、日中の活動や持病に応じて相談する。

4.昼間の活動が、夜の眠りにつながる

ガイドは日中を活動的に過ごし、長時間の昼寝を避けることを勧めています。散歩、買い物、人との交流、体調に合う運動など、無理のない予定をつくります。長い昼寝や夕方の居眠りがある場合は、夜の寝つきとの関係を確かめます。活動が難しい方では、持病や身体機能に応じた過ごし方を相談します。眠気を我慢して危険な作業を続けるのではなく、なぜ日中に眠くなるかを見直すことも必要です。昼と夜のメリハリを少しずつ取り戻します。

5.寝室と夕方以降の習慣を整える

寝室の音、明かり、温度を調整し、カフェイン、ニコチン、飲酒など眠りに影響する習慣を確認します。眠気が出る前から長く床にいる場合は、就床時刻を見直す手がかりになります。なかなか眠れないとき、寝床の外の静かな場所で落ち着いて過ごし、眠気を待つ方法もあります。ただし夜間に移動する場合は転倒に注意し、安全を優先します。薬を飲んでいる方は、効き方や翌朝のふらつきも含め、自己判断で増減せず相談しましょう。

6.休養感が戻らないときは、ほかの原因も確かめる

生活や寝室を見直しても休めない、日中の眠気や不調が続く場合は、睡眠時無呼吸などの睡眠障害や、身体・こころの病気が隠れていることがあります。痛み、呼吸の苦しさ、服薬、気分の変化なども眠りに影響します。家族から見た睡眠中の様子も役立つ情報です。本人が困っていることと、周囲が気づいた変化を一緒に伝えます。睡眠時間だけを減らす対策で終わらせず、必要な睡眠を保ちながら、昼間を過ごしやすくする方法を考えます。

7.本人の実感と家族の気づきを持ち寄る

一週間の記録を見ながら、夜に目覚めても翌日に困らないのか、疲れや眠気で予定を控えるようになったのかを分けて考えます。家族は、眠りの時間を一方的に決めるのではなく、本人のつらさや希望を聞きます。外出が減っている場合も、単に昼寝をやめさせるのではなく、痛み、移動の難しさ、生活環境などを確認します。毎日の食事や交流の時間が、生活にメリハリを戻す手がかりになることもあります。強い眠気があるときは安全を優先し、活動を無理に増やさず相談してください。生活の工夫で対応できる部分と、病気や薬を確認する部分を分けることで、自分に合った休み方を探しやすくなります。

出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」高齢者版・冊子19〜21頁

夜中のトイレ|尿の量・膀胱・目覚めを分けて見る

夜、尿意で目が覚めてトイレに行くことを夜間頻尿といいます。回数だけでなく、もう一度眠れるか、ふらつきや転倒につながっていないか、翌日に疲れが残るかも大切です。年齢のせいとあきらめず、どのような夜なのかを整理します。

夜中にトイレへ向かう準備をする男性、排尿日誌を記録する場面、夫婦で医師へ相談する場面。

夜間に作られる尿が多い場合、膀胱にためられる量が少ない場合、睡眠が途切れて目覚めたついでに排尿している場合があり、複数が重なることもあります。前立腺や過活動膀胱だけでなく、無呼吸、むくみ、糖尿病、心臓・腎臓の病気、薬の影響も確認します。

『毎回たくさん出る』のか、『少しずつ何度も出る』のかが、原因を考える手がかりです。自分で判断して水分だけを減らすより、排尿の時刻と量、飲み物、睡眠の記録を持って相談しましょう。日中も極端に尿量が多い、強い口渇がある場合は内科的な確認も必要です。

無呼吸で夜の尿が増えるのは、なぜ?

睡眠中にのどが閉じると、息を吸おうとして胸の中が強い陰圧になります。この圧の変化は心臓の壁への負担や心房の伸展につながり、身体が水分を多く抱えているような信号を生むことがあります。

無呼吸による胸腔内陰圧の増大から心房伸展、ANPなどを介した尿量増加の経路。

無呼吸と、夜の尿のつながり

複数ある仕組みの一つです。

  1. のどが閉じても、息を吸おうとする胸の中の陰圧が強くなる
  2. 心臓の壁に負担がかかる心房の伸展などがホルモン分泌に関わる
  3. ANPなどの作用が強まる腎臓から塩分・水分が出やすくなる
  4. 夜間に作られる尿が増えることがある無呼吸による目覚めも重なる

心房細動が必ず途中に起きる、という意味ではありません。

そこで関わるのが、ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)など、塩分と水分の排出に関わるホルモンです。ANPなどの作用が強まると腎臓から塩分・水分が出やすくなり、夜間の尿量が増える経路が考えられています。低酸素による循環への影響も関わり、仕組みは一つではありません。

無呼吸は、目を覚まさせるだけでなく、夜間の尿の作られ方にも影響することがあります。一方、心房細動が必ず起き、その不整脈を介して夜間頻尿になるという流れではありません。不整脈や心不全がある方は、その病気自体の評価も並行して受けます。

大きないびき、息が止まるという指摘、起床時の頭痛、日中の眠気と夜間頻尿が重なるなら、睡眠外来で相談する理由になります。夜間頻尿だけから無呼吸と診断することはできず、問診と必要な検査で確認します。

出典:CUA夜間頻尿ベストプラクティス(2022)、AUA/SUFU(2024)

CPAPでトイレの回数も減りますか?

睡眠時無呼吸が夜間頻尿に関わっている方では、CPAP治療によって夜の排尿が減る場合があります。ただし、回数が必ず減るわけではなく、泌尿器の病気や心臓・腎臓の状態などが重なると、別の対応も必要です。

治療前後で、夜間の排尿回数、眠り直すまでの時間、朝の調子を記録しておくと変化を伝えやすくなります。マスクの漏れや鼻づまりで外してしまう場合も、続けられない事情として相談します。装着時間だけを気にして不快感を我慢する必要はありません。

夜間頻尿が残ったときは、CPAPが無意味だったと決めつけず、無呼吸が十分に抑えられているか、尿の量や膀胱の問題がないかを確認します。睡眠外来、かかりつけ医、泌尿器科で情報を共有し、次にどこへ相談するかを決めましょう。

3日ほどの排尿日誌で、夜の様子を見える形に

排尿日誌では、排尿した時刻と量、飲んだ時刻・量、床に入った時刻、起きた時刻を記録します。医療機関から用紙や測り方の案内を受けると取り組みやすくなります。3日程度が一つの目安ですが、測定が難しい方は回数や困った場面から伝えて構いません。

尿量、膀胱症状、目覚めた理由と排尿日誌の確認項目。

夜のトイレは、3つの面から

回数だけでなく、量と目覚めも伝えましょう。

  1. 尿の量毎回多い? 日中も多い?
  2. 膀胱の症状少量でも強い尿意? 痛みや出にくさは?
  3. 目が覚めた理由尿意で起きた? 先に目覚めていた?
  4. 持っていく記録排尿の時刻・量/飲み物/就床・起床

記録だけで診断せず、診察・検査と合わせて考えます。

『23時に就床、1時と4時に排尿、6時に起床』という記録に、尿量と、尿意で起きたのか先に目が覚めたのかを添えます。介護者が記録する場合も、無理に起こしたり排尿を促したりせず、普段の一日を残します。

夜間尿量を評価するときは起床直後の最初の尿も含めますが、その排尿は夜間に起きた回数には数えません。集計は医療者に任せてよく、まず時刻と量を記録することが役立ちます。日誌だけで病気が決まるわけではなく、診察や検査と合わせて使います。

むくみ・持病・薬も、夜の尿に関わります

夕方に脚がむくむ方では、横になって脚の水分が循環に戻ることが、夜間の尿量に関わる場合があります。むくみの原因には長時間の座位だけでなく、心臓や腎臓の病気などもあるため、自己判断で運動や水分制限を強めないことが大切です。

利尿薬などは、飲む時刻が排尿の時刻に影響することがあります。しかし、持病の治療に必要な薬を止めると体調が悪くなることもあります。服薬時刻、夕方のむくみ、体重の変化、息切れをまとめて、処方医に相談してください。

水分は就寝直前にまとめて多く飲んでいないかを見直しますが、日中まで一律に減らすのは避けます。必要量は持病や気温、活動によって異なります。急な息苦しさ、胸の痛み、血尿、発熱を伴う排尿の痛みなどがあれば、睡眠習慣の見直しだけで様子を見ず受診してください。

トイレまでの安全と、眠り直しやすさを整える

起き上がってすぐに歩くとふらつく方は、いったんベッドの端で姿勢を整えます。通路の物や敷物を減らし、足元が見える照明を用意しましょう。まぶしすぎる照明で部屋全体を明るくするより、安全に移動できる範囲を照らす工夫が考えられます。

眠れない夜があると翌日は早く床に入りたくなりますが、眠くない時間から長く横になると、かえって眠りがまとまりにくいことがあります。日中に無理のない活動や人と会う予定を取り入れ、長い夕方の居眠りを避けるなど、夜だけでなく一日を見直します。

睡眠薬を追加してトイレの目覚めを抑えようとせず、夜間の移動と薬の安全性を一緒に相談しましょう。薬によるふらつき、転倒、翌朝の眠気は受診時に伝えたい情報です。介護の負担が大きい場合は、寝室や排泄の環境も含めて支援者と相談します。

脚のむずむずで眠れないとき

眠れない背景に、脚を動かしたくなるむずむず感がある場合はRLSも考えます。腎臓の病気、鉄の状態、服薬との関係を確認することがあり、痛み止めや睡眠薬だけを増やしても十分に対応できない場合があります。

夕方から夜、安静にしているときに不快感が出るか、脚を動かすと和らぐかを伝えてください。夢に合わせた大声や動きについては、次の専用の節で説明しています。

夜間頻尿の相談先を、一緒に決めましょう

排尿の困りごとは泌尿器科、いびき・無呼吸は睡眠外来、むくみや持病はかかりつけ医が相談先になります。原因が重なる場合もあるため、排尿日誌とお薬手帳を共有し、検査結果を踏まえて診療をつなぎます。

寝言に加えて、殴る・蹴る動きがあるとき

夢に合わせるように大声を出す、手足を激しく動かす、ベッドから落ちる場合は、レム睡眠行動障害(RBD)などが考えられます。寝言だけで診断はできず、睡眠時無呼吸などとの区別も必要です。

けがの危険があるときは寝室の安全を確保し、睡眠外来や脳神経内科へ相談してください。ベッド周りの硬い物や危険な物を片づけ、同室の方の安全も確かめます。発生した時刻や動きの様子を、家族の気づきと一緒に伝えましょう。

受診で伝えたい、3つのこと

  • いつから・週に何回ほど困っているか。
  • 夜間の排尿、いびき、寝言や動きなど、目覚めに伴う症状。
  • 日中の眠気、転倒、現在の薬、家族が気づいた変化。

睡眠薬を使っている方は、効き方だけでなく翌朝のふらつきも伝えてください。薬の追加や中止は医師と相談します。

出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」高齢者版(冊子19〜21頁)

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参考文献・出典

本記事は一般的な情報提供を目的としています。症状や持病に合う対策、薬の変更は担当の医師にご相談ください。

下浦雄大

下浦 雄大

日本睡眠学会認定 総合専門医
日本医師会認定 産業医

RESM新東京スリープメディカルケアクリニック
副院長

📋 この記事の執筆者はコチラ

睡眠専門医が、あなたの「眠れない」に答えます。

山梨大学医学部卒業後、循環器内科での臨床経験を経て睡眠医療へ転身。現在はRESM新東京スリープメディカルケアクリニック副院長として、睡眠・循環器・産業医の3領域で診療中。一般クリニックでは対応困難な「過眠症」や「概日リズム睡眠障害」まで、科学的根拠にもとづいた支援を行っています。


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RESM新東京スリープメディカルケアクリニック 副院長 下浦 雄大 | 日本睡眠学会認定総合専門医  日本医師会認定産業医