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年代・ライフステージと眠り

女性の眠り|月経・妊娠・更年期の変化

月経前の眠気、妊娠中の寝づらさ、育児で途切れる睡眠、更年期の寝汗。女性の眠りは、ホルモンの変化と日々の暮らしの両方から影響を受けます。今の時期に合う工夫と、相談したい症状を見ていきましょう。

月経前の疲れ、妊娠中の休息、更年期の寝汗に向き合う女性。

睡眠ガイド2023から

女性の眠り|身体の変化と休む機会を確かめる

厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」の女性の睡眠に関する解説章をもとに、生活で確かめたい点をまとめました。

1.ホルモンと生活環境の両方から考える

ガイドの女性の睡眠に関する章では、月経周期、妊娠、育児、更年期などに伴う変化が説明されています。眠りには女性ホルモンの変化だけでなく、痛み、気分、仕事や家庭での負担も関わります。すべての女性が同じ変化を経験するわけではなく、妊娠や育児を経験するかどうかも人それぞれです。年齢に合った睡眠時間の目安を土台に、現在の身体の状態と、休む機会を確保できているかを合わせて考えます。

2.月経周期と眠気・不眠の関係を記録する

月経周期の中で、日中の眠気や夜の眠り方が変わることがあります。月経前には眠気が増えたり、眠りが浅く感じられたりする場合があり、月経痛も睡眠を妨げます。周期の日付と、寝つき、目覚め、眠気、気分や痛みを一緒に記録すると、繰り返す傾向がわかります。つらさが学校や仕事に影響する場合は婦人科で相談できます。出血に伴う鉄不足などが脚のむずむずに関わることもあるため、睡眠以外の症状も伝えます。

3.妊娠中の眠りは、時期によって変わる

妊娠初期の眠気や体調の変化、おなかが大きくなる時期の寝づらさなど、妊娠中にはさまざまな理由で眠りが変化します。脚のむずむず、こむら返り、夜間の目覚めが気になることもあります。寝室を整え、楽な姿勢や体調に合う活動を、妊婦健診での助言に沿って考えます。新たないびきや呼吸停止は、妊娠中だから仕方がないと済ませず相談します。薬やサプリメントは妊娠・授乳中であることを伝え、使用や変更を医療者と確認します。

月経、妊娠・育児、更年期で眠りを振り返り、休む機会と症状の両方に対応する。

4.育児中は、眠る機会を周囲と分け合う

授乳や夜間のお世話で睡眠が分かれる時期には、寝室や生活習慣だけでは十分に改善できないことがあります。家族や支援者と家事・育児の担当を相談し、まとまって休める時間を確保することが重要です。赤ちゃんが眠っている間も用事をすべて片づけようとせず、自分の休息も予定に含めます。眠る機会があるのに眠れない、気分の落ち込みや強い不安が続くときは、産婦人科や地域の保健相談につなげます。眠れないことを本人の努力不足にしない支援が必要です。

5.更年期は、ほてり・寝汗と眠りを一緒に相談する

更年期には、ほてりや寝汗などで睡眠が途切れることがあります。寝具や室温を調整しながら、日中の症状、気分の変化、仕事や家庭での負担も含めて振り返ります。症状がつらい場合は婦人科で治療を相談できます。ホルモン補充療法などは、症状や病歴に応じて医師と利点・注意点を検討するもので、睡眠のために誰にでも必要というものではありません。閉経後には睡眠時無呼吸も増えるため、いびきや眠気があれば別の原因も確認します。

6.相談は、困っている症状を入口に選ぶ

月経痛、周期に伴う不調、妊娠・更年期の症状が中心なら婦人科・産婦人科で相談できます。いびき、強い眠気、脚の不快感、眠れないことによる日中の支障が中心なら、かかりつけ医や睡眠外来も相談先です。眠った時間、症状が出る時期、服薬、生活の変化をメモしておくと役立ちます。ホルモン変化だけに原因を決めず、必要に応じて診療科が情報を共有します。薬を急にやめるなど一人で調整せず、身体の状態に合った対策を考えましょう。

7.日誌には、症状と生活の条件も残す

睡眠の記録には、就寝・起床だけでなく、痛みやほてりで起きたのか、お世話のために起きたのかなど、中断の理由も添えます。月経周期との関係が気になる場合は、その日付も役立ちます。生活の負担が大きいときには、夜の担当を交代できる日、日中に休める時間、利用できる地域の支援を具体的に相談します。自分の生活だけで調整できないことを、すべて生活習慣の問題として抱え込む必要はありません。一方、十分な機会があっても眠れない場合は、症状そのものの評価が必要です。身体の変化と睡眠を一緒に伝えることで、診療科の間で情報を共有しやすくなり、必要な治療や支援を選ぶ手がかりになります。

出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」女性の睡眠・冊子38〜41頁

いま気になるのは、どの場面ですか?

女性の眠りには、月経周期や妊娠・出産、更年期の身体の変化に加え、仕事や家事、介護などで休む時間が削られることも関わります。同じ『眠れない』でも、脚の不快感で眠れない場合と、寝汗で目が覚める場合では、確かめたいことが違います。

月経前に眠気や気分の変化が重なるなら周期との関係を、布団で脚がむずむずするなら安静・時刻・動きとの関係をメモします。いびきや呼吸停止を指摘された場合は、更年期や疲れのせいだけにせず睡眠の検査を相談しましょう。

RLSや無呼吸は女性だけの病気ではありませんが、女性のライフステージを踏まえて見つけたい睡眠障害です。症状がいつ始まり、いつ強くなるかを入口に、下の項目から読んでみてください。

横になると脚がむずむずする|RLSと鉄の関係

夕方、ソファで休んだり布団に入ったりすると脚の奥が落ち着かず、動かしたくなる。歩くとその間は軽くなるのに、横になるとまた気になる。こうした経過は、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)を考える手がかりです。痛みやしびれだけで診断は決まりません。

夕方に脚の不快感を感じる女性、歩いている場面、薬と検査について医師に相談する場面。

RLSでは、貧血の有無だけでなく、身体に蓄えられた鉄の状態も確認します。月経量が多い方、妊娠中の方、食事が偏りがちな方では、鉄不足の背景にも目を向けます。ヘモグロビンが正常でも鉄の蓄えが少ないことがあり、必要に応じてフェリチンなどを測ります。

ただし、脚の不快感がすべて鉄不足によるわけではなく、フェリチンは炎症などでも変動します。市販の鉄剤を多く飲めば改善するという意味ではありません。検査結果、出血や食事、持病を合わせて医師と判断します。月経量の多さや息切れもある場合は、婦人科や内科にも伝えましょう。

AASMの治療ガイドラインは鉄の評価に加え、悪化要因の見直しを重視しています。カフェイン・飲酒、一部の抗ヒスタミン薬や抗うつ薬、未治療の睡眠時無呼吸などが関係することがあります。薬が必要な病気もあるため、自己中止せず薬の一覧を見せて相談してください。

むずむず・こむら返り・発作は、どう違う?

『夜、脚がおかしい』という一言だけでは、困りごとの内容が伝わりにくいことがあります。動かしたくなる感覚なのか、筋肉が硬くなって痛むのか、自分では気づかない動きなのかを分けてみます。

むずむず、こむら返り、睡眠中の動き、発作の違い。

夜の脚の症状、どう伝える?

似た言葉でも、確かめたいことが違います。

  1. むずむずして、動かしたい安静で悪化/夕方・夜に強い/動くと軽い
  2. 突然つって、強く痛む筋肉が硬くなる。こむら返りなどを確認
  3. 眠っている間に脚が動く本人は気づかないことも。家族の観察を伝える
  4. 意識や全身の動きに異変がある発作など、別の評価が必要な場合も

急な発作・意識が戻らない場合は、救急対応が必要です。

RLSは主に起きて安静にしているときの不快感と、動かしたくなる衝動が特徴です。こむら返りは突然筋肉がつって強く痛む状態。睡眠中に繰り返す脚の動きは、本人に自覚がないこともあり、RLSと同じものとは限りません。

意識が途切れる、全身が突っ張る、同じ動きが繰り返されるなどの発作が疑われる場合は、別の評価が必要です。家族が見た動きや持続時間は手がかりになりますが、撮影より安全確保を優先します。初めての全身けいれん、長く続く発作、意識が戻らない状態は救急対応が必要です。

月経前だけ眠い・眠れない|PMSの周期を見つける

月経前に強く眠くなる、寝つきにくい、いらいらする、胸が張るなどの変化が重なることがあります。月経が始まると軽くなる周期的な症状は、月経前症候群(PMS)の相談につながります。気分の症状が強く生活に大きな支障がある場合は、月経前不快気分障害(PMDD)なども検討されます。

月経、眠り、身体と気分、生活への影響を同じ日誌に記録。

月経と眠りを、同じメモに

周期との関係を、2〜3周期ほど振り返ります。

  1. 月経日と薬の変更開始日/量が多い日/薬を変えた日
  2. 夜の眠り・昼の眠気寝つき/目覚め/居眠りした場面
  3. 身体と気分の変化脚の不快感/ほてり/痛み/気分
  4. 暮らしへの影響授業・仕事・家事で困ったこと

つらいときは、記録がそろう前でも相談できます。

まずは2〜3周期ほど、月経日、就床・起床、眠気、気分、日中の支障を同じメモに並べます。『いつも調子が悪い』と感じていても、時期がそろうのか、周期を通じて続くのかが見えやすくなります。診察で詳しい記録が必要かどうかも相談できます。

月経前の眠気と、睡眠不足や別の病気による眠気は重なることがあります。月経が終わっても強い眠気が続く、十分に眠る機会があっても居眠りしてしまう場合は、PMSだけで説明せず睡眠外来や内科にも相談します。つらさを我慢して記録を完成させてから受診する必要はありません。

妊娠・産後|身体の変化と、休める時間を分けて考える

妊娠中は眠気、頻尿、姿勢の取りづらさなどで睡眠が変わります。脚のむずむずが新しく出たり悪化したりすることもあります。鉄の状態や薬の使用は、妊娠週数や合併症を含めて産科で確認します。新しい強いいびきや呼吸停止、朝の頭痛なども健診で伝えましょう。

産後は授乳や育児で睡眠が細切れになり、合計時間が確保できても休めた感じが乏しくなります。就寝前の工夫だけで解決しようとせず、家族と交代できる時間、家事を減らせる部分、支援を頼める相手を具体的に決めることが大切です。

赤ちゃんが眠っていて自分も休めるのに眠れない、気分の落ち込みや強い不安が続く場合は、産科や保健師などに相談してください。妊娠・授乳中に使える治療は個別に検討します。以前の睡眠薬やサプリメントを自己判断で再開せず、服用中のものをまとめて伝えます。

更年期の目覚め|ほてりだけでなく呼吸にも注目

ほてりや寝汗で目が覚める、気分の変化とともに寝つきが悪くなることがあります。室温や寝具の調整に加え、症状が強い場合は婦人科で更年期の治療を相談できます。ホルモン療法は、症状や既往歴を踏まえて選ぶもので、あらゆる睡眠障害を治す治療ではありません。

閉経後は睡眠時無呼吸にも注意が必要です。女性では、強いいびきだけでなく、眠れない、疲れが抜けないなどが相談の入口になることもあります。寝汗の対策をしても何度も目が覚める、呼吸が止まると言われる場合は、睡眠の評価も一緒に考えましょう。

日中の活動、睡眠の機会、痛みや気分、服薬を合わせて見直します。『年齢の変化だから仕方がない』で終えず、何が眠りを妨げているのかを分けると、対処を選びやすくなります。

ピルと睡眠・発作|薬の組み合わせを確認する

ホルモンの変化と睡眠の関係はありますが、ピルを服用すると一般にけいれんが起こる、という説明は適切ではありません。月経周期に関連して変動するてんかん発作と、薬どうしの相互作用は分けて考える必要があります。

例えばエストロゲンを含む配合剤は、抗てんかん薬ラモトリギンの血中濃度を下げることがあります。服用の開始・中止や休薬期による変動も含め、発作の治療と避妊・月経症状の治療を両方確認します。すべてのピル、すべての抗てんかん薬に同じ影響があるわけではありません。

ピルや抗てんかん薬を自己判断で中止・増減せず、両方の処方医に薬の一覧を共有してください。薬を変えた時期と、眠気・不眠・脚の症状・発作の変化を伝えると、相談が具体的になります。市販の鼻炎薬、眠気対策の飲料、サプリメントも一覧に含めます。

相談に持っていくメモは、この4つ

① いつから、どんな眠り?

寝つけない、途中で起きる、日中に眠いなど、困る場面と続いている期間。

② 身体の症状との関係は?

月経、痛み、妊娠の週数、ほてり・寝汗など、気づいた関係。

③ 眠れる機会はある?

仕事や夜間のお世話、家事で削られる時間と、頼めそうな支援。

④ 薬や持病は?

処方薬、市販薬、サプリメントをまとめて伝える。

どの診療科か迷うときは、かかりつけ医へ。このメモを使い、睡眠と身体の症状を一緒に相談できます。

婦人科と睡眠外来、どちらに相談する?

周期・妊娠・更年期の症状が中心

月経や妊娠の経過、ほてり・寝汗との関係を、婦人科・産婦人科で相談します。

いびき・強い眠気・脚のむずむず

かかりつけ医や睡眠外来で相談できます。必要に応じて婦人科と情報を共有します。

睡眠時間、症状の時期、現在の薬をメモしておくと役立ちます。年齢別の睡眠時間の目安と合わせて、今の生活で休めているかも確認しましょう。

出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」妊娠・子育て・更年期と良質な睡眠(冊子38〜41頁)

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参考文献・出典

本記事は一般的な情報提供を目的としています。症状や持病に合う対策、薬の変更は担当の医師にご相談ください。

下浦雄大

下浦 雄大

日本睡眠学会認定 総合専門医
日本医師会認定 産業医

RESM新東京スリープメディカルケアクリニック
副院長

📋 この記事の執筆者はコチラ

睡眠専門医が、あなたの「眠れない」に答えます。

山梨大学医学部卒業後、循環器内科での臨床経験を経て睡眠医療へ転身。現在はRESM新東京スリープメディカルケアクリニック副院長として、睡眠・循環器・産業医の3領域で診療中。一般クリニックでは対応困難な「過眠症」や「概日リズム睡眠障害」まで、科学的根拠にもとづいた支援を行っています。


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RESM新東京スリープメディカルケアクリニック 副院長 下浦 雄大 | 日本睡眠学会認定総合専門医  日本医師会認定産業医