1.必要な睡眠を、年齢に合わせて確保する
睡眠には、心身を休めるだけでなく、脳と身体の成長や、学んだことを記憶に残す働きがあります。ガイドは、昼寝を含めて1〜2歳で11〜14時間、3〜5歳で10〜13時間、小学生で9〜12時間、中学・高校生で8〜10時間を参考に、睡眠を確保するよう勧めています。必要な時間には個人差がありますが、授業中の眠気や朝の起きづらさが続くときは、まず普段どれだけ眠れているかを確かめます。睡眠不足は気分や注意、学業などの困りごととも関係します。
中学生・高校生・大学生と、支える大人へ
学校、部活、塾、宿題。
忙しい一日の中に、眠る時間は残っていますか。

あと1時間勉強するか、今日は眠るか。試験が近づくほど、迷う場面です。睡眠は、学んだ内容を定着させ、翌日の学習を支えます。勉強の量と眠る時間を一緒に考え、続けられる時間割を探してみましょう。
このページでは、暗記・技能の練習と睡眠の関係から、学校と塾の時間割、カフェイン、相談の目安までを整理します。
睡眠ガイド2023から
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」のこども版をもとに、生活で確かめたい点をまとめました。
睡眠には、心身を休めるだけでなく、脳と身体の成長や、学んだことを記憶に残す働きがあります。ガイドは、昼寝を含めて1〜2歳で11〜14時間、3〜5歳で10〜13時間、小学生で9〜12時間、中学・高校生で8〜10時間を参考に、睡眠を確保するよう勧めています。必要な時間には個人差がありますが、授業中の眠気や朝の起きづらさが続くときは、まず普段どれだけ眠れているかを確かめます。睡眠不足は気分や注意、学業などの困りごととも関係します。
思春期には体内時計の働きが変化し、眠りに関わるメラトニンの分泌が始まる時刻も遅くなる傾向があります。そこに部活、塾、宿題、友人との連絡などが重なると、就寝はさらに後ろへずれます。一方、登校時刻は早いままなので、睡眠時間が削られやすくなります。朝起きられない姿だけを見て意欲の問題と決めず、就寝・起床、通学、放課後の予定を合わせて確認します。週末に起床が大きく遅れる場合も、平日の不足やリズムのずれを振り返る手がかりになります。
起床後はカーテンを開けて自然の光を取り入れ、朝食をとれる時間を残します。朝の光は体内時計を一日の生活に合わせる手がかりになります。夜ふかしで朝食の時間がなくなる、朝の支度に追われて外の光を浴びない、といった流れを少しずつ見直します。休日も起床が大幅に遅れ続けないようにしながら、平日に必要な睡眠を確保することが基本です。眠れないまま早起きだけを強いるのではなく、夜の予定までさかのぼって考えます。
遊びや通学、運動など、日中に身体を動かす機会を持つことが勧められます。夜遅くまでの激しい運動は、寝つきに影響する場合があります。部活で十分に動いている子には、さらに運動を足すより、夕食・入浴・宿題を済ませて眠れる時間を残す工夫が必要です。余暇をすべて課題で埋めず、楽しめる活動や気持ちを落ち着ける時間も大切にします。運動、学習、休息のどれか一つではなく、一日の配分として整えます。
寝る前のスマートフォンやゲームは、画面の光だけでなく、内容に夢中になることでも就寝を遅らせます。寝室へ端末を持ち込むか、何時に連絡を終えるかを、本人と家族で相談します。夜は室内の明かりを落とし、寝室の温度や音も調整します。眠気覚ましの飲み物に頼って勉強を続ける生活も見直す対象です。小さい子の昼寝は発達に応じて必要ですが、夜の寝つきとの関係も見ながら、保育者と生活の時間を共有します。
睡眠の確保には家庭だけでなく、学校や習い事の予定も関わります。睡眠不足が続くときは、課題量、練習の時間、帰宅後の過ごし方を大人も一緒に調整します。寝ぼけや寝言は成長とともに減ることもありますが、けがの危険や生活への影響があれば相談が必要です。睡眠時間を確保しても強い眠気や起きづらさが続く、いびきや呼吸停止がある場合は、生活習慣だけで説明できないことがあります。小児科や睡眠を扱う医療機関に、年齢と具体的な場面を伝えましょう。
就寝を整えるときは、先に一日の予定を見えるようにし、どの活動をどこへ移せるかを相談します。翌朝の支度を夜の早い時間に済ませるなど、負担を増やさない工夫から始められます。年齢が小さいうちは保護者が環境を整え、思春期には本人が困っていることも聞いて決めると、生活に取り入れやすくなります。眠れた日は朝の支度や授業中の様子がどう違うかも確かめます。一晩の変化で良し悪しを決めず、続く傾向を見て、難しい部分を調整します。睡眠は勉強のためだけにあるものではなく、成長やこころと身体を支える生活の土台です。受験期にも、眠りを削る前に予定の配分を見直しましょう。
ここからは学校・塾・受験勉強のある一日を具体的に見ていきます。眠る時間を残す工夫と、学習を支える眠りの働きを、図で確かめましょう。
01
朝練から始まり、授業、部活、塾、帰宅後の宿題へ。生徒一人の時間割が、朝早く活動する大人と、夜遅くまで働く大人の両方に重なっていないかを見てみましょう。
以下は比較のための架空の時間割です。先生方の実際の勤務・睡眠時間を示す調査ではありません。

ところが、この例では22時ごろも帰宅後の予定が続き、眠るのは0時。朝練のある朝と、塾から帰った夜の間で、睡眠が6時間に縮まっています。
「もっと早く寝て」と伝えるだけでなく、朝練、塾の終了時刻、移動、宿題の量を一緒に見直すことが必要です。
時計の図では、学校の時間は緑系、塾はオレンジ、睡眠は青系で示しています。先生の勤務時間も同じ色で重ねています。時刻は比較のための例で、先生方も勤務や家庭の事情によって十分に眠れていない場合があります。
02
日本の「睡眠ガイド2023」は、小学生9〜12時間、中学・高校生8〜10時間を参考に睡眠を確保することを勧めています。米国睡眠医学会(AASM)も、6〜12歳9〜12時間、13〜18歳8〜10時間としています。

中高生は「8〜10時間」が目安です。 大学生になっても、全員が短い睡眠で足りるようになるわけではありません。18歳はAASMの思春期の区分にも含まれ、若い成人には9時間を超える睡眠が適切な場合もあります。
眠っている時間と、布団の中にいる時間も別です。寝つくまでの時間、途中の目覚め、日中の眠気を合わせて考えます。数字を達成できない日があっても責めず、続けられる調整から始めましょう。
厚生労働省|健康づくりのための睡眠ガイド2023AASM|小児・思春期の推奨睡眠時間AASM・SRS|成人の推奨睡眠時間04
思春期には、体内時計が遅い時刻へずれやすくなります。夜になっても眠気が来にくい一方、朝の登校時刻は変わりません。夜の明るい照明やスマートフォン、遅い予定も重なると、早起きだけを求めても睡眠が足りなくなります。
メラトニンは、体に夜の時刻を伝えるホルモンです。薄暗い環境で分泌が増え始める時刻(DLMO)を年代別にまとめた解析では、10代の平均が最も遅い時刻でした。十分な睡眠時間が必要な時期に、眠り始める時刻は遅くなりやすいという両面から、朝と夜の予定を考えます。

点は年代ごとの平均、横線は個人差の広がりです。同じ人を成長とともに追った結果ではなく、この時刻に就寝すべきという意味でもありません。睡眠日誌と日中の調子を合わせて、本人に合う生活の調整を考えましょう。
起きられない理由を、意欲だけで判断しないことが大切です。 ただし、朝の不調がすべて体内時計の問題というわけでもありません。睡眠不足、心身の不調、睡眠の病気などを分けて考えます。
まずは平日と休日の眠る時刻・起きる時刻・眠気を1〜2週間記録しましょう。朝の光、朝食、日中の活動を取り入れ、夜は明るさと予定を見直します。大幅に生活がずれている場合は、自己流で徹夜して戻そうとせず相談してください。
思春期の睡眠・認知・精神的健康に関する総説05
英単語、歴史上の出来事、公式の意味。言葉にして説明できる知識は「宣言的記憶」と呼ばれます。学習には、最初に情報を取り込むこと、時間がたっても保つこと、必要なときに思い出すことが必要です。

前夜の睡眠が、集中と新しい学習を支えます。
睡眠中の脳の活動が、記憶の整理・保持に関わります。
答えを見ずに取り出し、間違えたところを復習します。
徹夜後に新しい情報を覚える実験では、通常の睡眠後に比べて記憶形成が妨げられました。「覚えてから眠る」だけでなく、学ぶ前日の睡眠も大切です。
Yoo ほか 2007|徹夜後の新しい記憶の形成15〜19歳の56人を、1週間の就床時間が5時間または9時間の群に分けた研究があります。同じ総学習時間でも、一度にまとめた英単語は、睡眠を制限した群で忘れやすくなりました。数日に分けた学習では、群間の差はみられませんでした。
試験直前の一夜に集めず、睡眠を挟んで何度か復習する。 この研究は、その組み合わせを考える参考になります。5時間と9時間は実験条件であり、全員の得点の伸びや必要睡眠時間を決める結果ではありません。
Huang ほか 2016|思春期の睡眠制限と単語学習06

指づかい、順番、リズムを確かめます。
複数の睡眠段階が、技能の記憶にも関わります。
できたところ・難しいところを確認しながら続けます。
指づかい、踊りの順番、運転操作のように、練習で身につく技能には「手続き記憶」が関わります。実際の演奏や運転では、知識・注意・判断も一緒に働くため、一種類の記憶だけで説明できません。
深い睡眠のゆっくりした波や、睡眠紡錘波という短いリズムが、記憶の再活性化・定着に関わります。知識だけでなく、運動技能の研究でも関連が調べられています。
知覚の学習や情動を伴う記憶などとの関連が研究されています。ノンレム睡眠と繰り返し現れ、一晩を通して記憶に関わります。
「暗記はノンレム、技能はレム」と一対一に分けることはできません。 特定の睡眠段階だけを増やせばよい、という説明にもなりません。
Rasch・Born 2013|睡眠と記憶の総説Walkerらの研究では、一晩の睡眠後に指の運動課題が改善し、夜の後半のノンレム睡眠のステージ2の量との関連がありました。ピアノやダンスの上達率を直接測った結果ではありません。
Walker ほか 2002|睡眠と指の運動学習Karniらの視覚識別課題では、レム睡眠を選択的に中断すると翌日の改善がみられなくなりました。すでに学習済みの類似課題は保たれていました。特定の課題での結果を、暗記・技能すべてへ広げることはできません。
Karni ほか 1994|レム睡眠の中断と視覚学習睡眠段階を中断する実験では、覚醒の繰り返しなどの影響も考慮します。自分で睡眠を削って効果を確かめる必要はありません。
練習を短く区切り、眠った翌日にもう一度試す。できなかった部分を確かめながら続ける方法なら、睡眠も練習も大切にできます。眠いときの運転は避けてください。
07
6:30起床で8時間眠るなら、22:30までには眠っている計算です。寝つく時間も見込み、帰宅・食事・入浴から見直します。
提出物と追加練習を分け、終わらない分は先生と相談します。夜の学習だけを延ばし続けない計画にします。
短い復習を予定に入れます。寝る直前でなければ効果がない、ということではありません。
授業内の演習、通塾日の課題量、録画授業など、変更できる部分を相談します。
試験当日の起床・移動時刻を早めに確認し、普段とのずれを小さくしていきます。
22:30に寝ることが現実的でなければ、それは本人の努力だけでは埋めにくい時間割かもしれません。睡眠を確保できるかどうかまで含めて、学習計画を相談しましょう。
08
学校には登校や交通の事情があり、塾には授業時間や受験準備への要望があります。家庭も送迎や仕事との調整が必要です。睡眠だけを理由に一方の予定を否定するより、生徒の24時間を共有すると、変えられる箇所が見えてきます。
朝の授業中の眠気、遅刻、提出物の状況を一緒に確認。課題の締切が重ならない調整や、養護教諭との連携から始められます。
「授業時数や部活動、登校手段も変えにくい」→ 始業時刻の変更が難しくても、朝の追加活動や課題量を点検できます。
授業終了だけでなく、帰宅と就寝まで確認。遅い授業日の追加課題を減らす、早い時間帯・オンラインへ振り替えるなどを相談します。
「学習時間や保護者の期待にも応えたい」→ 在席時間だけでなく、翌日の理解・復習の継続を見て調整できます。
「早く寝なさい」で終えず、帰宅後に必要な作業を一緒に書き出す。睡眠日誌を学校や塾へ伝える材料にします。
「本人も受験が心配」→ 心配を否定せず、やる課題と先に回す課題を具体的に決めます。
米国睡眠医学会は、中学・高校の始業を8:30以降にすることを提言しています。これは米国の提言で、日本の一律の規則ではありません。時刻を変える検討では、交通、部活動、保護者の勤務、教職員の負担も合わせて考える必要があります。
AASM|中学・高校の始業時刻について課題の締切を一つ変える、帰宅後の追加学習を減らすなど、実行できる変更を選びます。睡眠時間、朝の起きやすさ、授業中の眠気、学習の取り組みやすさを本人と確認します。成績だけで評価したり、睡眠記録を叱責の材料にしたりしない運用が大切です。
09
勉強のために積極的に摂る必要はありません。日本でも、カフェインの一日摂取許容量(ADI)は設定されていません。海外の参考値として、カナダ保健省は18歳以下で1日あたり体重1kgにつき2.5mgを最大摂取量の目安としています。
これは摂るべき量でも、眠りに影響しない保証でもありません。 コーヒー、茶、コーラ、チョコレート、エナジードリンクなどを合計します。量は製品で大きく違うため、容器1本あたりの表示を確認してください。
子どものエナジードリンクの飲用は控えましょう。夕方以降はカフェインを避け、寝つきに影響するならさらに早い時刻から控えます。動悸や不安が出る場合もあります。カフェインで眠気を隠して、勉強時間を延ばし続けないようにしましょう。
厚生労働省|カフェインの過剰摂取に関するQ&AHealth Canada|食品中のカフェインと年齢別の目安厚生労働省|健康づくりのための睡眠ガイド2023昼寝を夜の睡眠の代わりにしないことが基本です。必要なら昼の早い時間に短く取り、夕方の長い昼寝で夜の寝つきが遅れないかを見ます。強い眠気が続く場合は、時間割だけでなく受診も検討します。
休日に長く眠るのは、平日の不足のサインかもしれません。起床が大幅に遅れると、日曜夜に眠れず月曜朝がつらくなることもあります。睡眠不足のまま起床だけを早めるのでなく、平日の眠る時間も確保しましょう。
思春期の睡眠制限研究では、2晩の回復睡眠後にも注意など一部の低下が残りました。「週末だけで必ず元どおり」とは言えません。
Lo ほか 2016|思春期の睡眠不足と注意・気分眠ろうと焦るほどつらくなることがあります。前夜だけで取り返そうとせず、数日前から学習と生活の時間を整えます。一晩の寝つきだけで試験の結果が決まるわけではありません。眠れない状態が続く場合は相談してください。
市販機器の睡眠段階は推定です。表示の割合だけで記憶力や学習効果を判断しないでください。まずは眠る時間、起床時の調子、日中の眠気を確認します。
時間割が自由になっても、アルバイトや夜更かしで睡眠が削られることがあります。朝の授業がある日とない日の差、夜勤、通学時間を含めて予定を組みます。強い眠気があるときは運転しないでください。
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睡眠時間を確保しても授業中に眠り込む、休日には眠れるのに学校の時刻にどうしても合わせられない、いびきや呼吸の停止を指摘される。こうした場合は、保護者や養護教諭と相談し、かかりつけ医・睡眠を扱う医療機関へつなげてください。
睡眠不足、体内時計のずれ、過眠症は、同じものではありません。 記録を取りながら区別していきます。気分の落ち込みや学校でのつらさも、一緒に伝えて大丈夫です。
11
生徒向けには「暗記と睡眠」「試験前の過ごし方」、保護者・先生向けには「起きられない生徒への関わり」「学校と塾を含めた時間割の見直し」など、対象に合わせてお話しします。
学習の機会を保ちながら睡眠を確保するために、現場の制約も含めて一緒に考える内容を想定しています。ご相談では、対象学年、参加者、開催時期、今のお困りごとをお知らせください。
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