年代・ライフステージと眠り
寝ても疲れが残る?成人の睡眠と休養感
同じ時間眠っても、すっきりする日と疲れが残る日があります。睡眠時間に加えて「眠って休めたか」を確かめると、見直すポイントが見えてきます。仕事や家事で眠る時間を取りづらい方も、今の一日から考えてみましょう。
執筆:下浦雄大|睡眠専門医 更新:2026年10月3日

睡眠ガイド2023から
成人の眠り|時間と休養感を一緒に見る
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」の成人版をもとに、生活で確かめたい点をまとめました。
1.6時間以上を目安に、自分に必要な時間を確保する
成人版では、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することが勧められています。6時間眠れば誰でも十分という意味ではありません。必要な時間は体質、年齢、日中の活動などで異なります。平日の短い睡眠、休日の長い睡眠、日中の眠気を並べて、自分の不足に気づくことが大切です。長く眠ろうとするだけでは解決しない場合もあるため、床に入っていた時間と実際に眠れた時間、目覚めた後の調子を合わせて見ます。
中高生などの睡眠時間の目安/高齢期の床上時間・日中の活動も確認できます。年齢で目安は異なるため、家族全員を同じ時間にそろえる必要はありません。
ショートスリーパーと、睡眠不足への慣れは違います
もともと短い睡眠で日中の支障なく過ごす人はいますが、「忙しくて短くなった」「短時間睡眠に慣れた」だけでは判断できません。休日に長く眠る、座ると寝落ちする、集中しづらいといった変化も確かめます。
短く眠る練習より、必要な睡眠の機会を確保することが基本です。睡眠時間・朝の休養感・日中の状態を一緒に記録しましょう。
2.睡眠休養感は「眠って休めた」という感覚
ガイドが重視する睡眠休養感は、睡眠によって休養がとれているという主観的な感覚です。寝つきがよい、途中で目覚めないということと完全に同じではありません。同じ睡眠時間でも、休めたと感じるかどうかは異なります。朝の疲れが残る、日中に集中しにくいといった困りごとも、眠りを振り返る手がかりです。時計や機器が示す時間だけで判断せず、自分の感覚も記録します。一方、休めた感じがあるから睡眠時間を削ってよいとは考えません。
3.健康との関連を知り、数値だけで不安にならない
短い睡眠や休養感の低さは、生活習慣病、心血管疾患、こころの健康などとの関連が研究されています。ガイドはこうした知見を踏まえ、睡眠の量と質の両方を見直すことを勧めています。ただし、観察研究の関連から、ある一晩の睡眠で病気になる、休養感を上げれば確実に予防できるとはいえません。持病や仕事、ストレスなども関わります。数字を達成することだけを目標にせず、慢性的な不足と続く不調を見つけて対応するために使います。

4.朝から夜までの習慣と寝室を整える
朝の光、規則的な食事、適度な運動は、一日のリズムを整える助けになります。夜は強い光や騒音、暑さ・寒さを減らし、落ち着ける寝室をつくります。夕方以降のカフェイン、喫煙、過度な飲酒も眠りを妨げることがあります。寝酒で一度は寝つけても、途中で目が覚めるなど睡眠の質が下がる場合があります。習慣は一度に全部変えず、遅いコーヒーや就寝前の作業など、実際に睡眠を圧迫しているものから見直します。
5.休日の寝だめだけに頼らず、平日を見直す
休日に長く眠ることが多い場合、平日の睡眠不足が隠れているかもしれません。休日の睡眠だけで、慢性的な不足による影響をすべて取り戻せるとは限りません。また、就寝と起床の時刻が大きくずれると、週明けの生活に戻りにくくなります。残業、通勤、家事や育児のために眠る機会が足りないときは、本人の工夫に加え、職場や家族との調整も必要です。就床時刻を早める余地を一日の予定から探し、無理なく続けられる変更を選びます。
6.十分な機会があっても休めないときは相談する
睡眠時間を確保し、生活や環境を整えても休養感が乏しいときは、睡眠障害や身体の病気などが関係する場合があります。いびき・呼吸停止、脚の不快感、寝つけない・何度も目覚めるといった症状がないか確認します。服薬、痛み、気分の落ち込みも伝えたい情報です。夜勤など勤務による制約がある場合は、その時間帯も含めて相談します。休養感を気合いで高めようとせず、日中の支障が続くことを受診の手がかりにしましょう。
7.記録を、続けられる改善につなげる
振り返りには、床に入った時刻、起床時刻、途中の目覚め、昼寝、朝の休養感を簡単に並べる方法が使えます。よく眠れた日とそうでない日に、残業、飲酒、食事、ストレスなどの違いがないか確かめます。記録を細かくつけること自体が負担なら、気になる点だけでも構いません。寝不足の原因が仕事量や介護にあるときは、寝室の改善だけに取り組んでも睡眠の機会は増えません。本人が変えられる点と、周囲に協力を頼みたい点を分けます。ガイドの目安は生活を振り返るためのもので、毎晩の達成を競う基準ではありません。眠りと日中の過ごしやすさが良くなっているかを、一緒に確認していきましょう。
出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」成人版・冊子11〜14頁
眠い・だるい・休めない|困り方を分けてみる
午後の会議でまぶたが閉じるのか、眠くはないけれど身体が重いのか。どちらも生活の負担になりますが、診察で確かめる点は少し違います。眠気は眠り込みそうになる感覚、疲労感は身体や気持ちの消耗、睡眠休養感は眠って休めた感覚です。いくつかが同時に起こることもあります。

眠りは、3つを一緒に確認
一つの数字だけで、良し悪しを決めません。
- 睡眠時間眠る機会は十分? 実際にはどのくらい?
- 睡眠休養感起きたとき、休めた感じがある?
- 日中の様子寝落ち・集中のしづらさ・だるさは?
6時間眠れば、誰でも十分という意味ではありません。
『疲れています』に、電車で寝過ごす、資料を読んでいると寝落ちする、起きてもしんどいなどの場面を一つ加えてみます。いつから、週に何日、仕事や家事にどの程度影響するかも、原因を考える材料になります。
休めた感じがあっても短い睡眠の影響がなくなるわけではなく、長く寝ても病気による眠気が残ることがあります。時間と感覚を別々に確かめると、『もっと寝る』だけでよいのか、受診も必要なのかを相談しやすくなります。
こんな場面があれば、関連する症状も確認
十分に眠る機会をつくっても調子が戻らない場合は、夜の症状と日中の様子を合わせて見ます。大きないびきや息が止まる指摘があるなら無呼吸、眠ろうとすると焦ってしまうなら不眠の相談が考えられます。夕方から脚が落ち着かず、動くと軽くなる場合はRLSが手がかりになります。
自分に合う時刻なら眠れるのに、学校や勤務の時刻には眠れない・起きられない場合は、体内時計と生活の時刻がずれている可能性があります。休日と平日の就床・起床の違いも、概日リズムの評価に役立ちます。
一方、睡眠不足が続いていても本人が慣れていると感じることがあります。過眠症の検査では、普段の睡眠不足や勤務の影響を先に確認することが大切です。検査だけで即座に原因がわかると考えず、睡眠日誌や勤務表を使って診察を進めます。
平日と休日|寝だめが必要になる一日を見直す
平日は終電近くに帰宅し、休日は昼まで眠る。こうした生活では、平日の不足を埋めようとする睡眠と、睡眠時刻のずれが重なります。休日に休むことを責めるのではなく、平日のどこで眠る時間が削られているかを見つけましょう。

帰宅後の食事、入浴、家事、スマートフォン、翌日の準備を並べて、明日に回せるものや分担できるものを一つ選びます。眠る時間を確保したまま起床時刻を整えることが基本で、遅くまで起きた翌朝に無理やり早起きするだけでは不足が増えます。
朝は光を取り入れ、食事や活動の時刻も大きくずれないようにします。どうしても眠れないのに早い時刻から寝床で粘ると、眠れない場所という感覚が強まることもあります。睡眠の機会を確保しても寝つけない状態が続くなら、非薬物療法を含めた不眠症の治療を相談できます。
昼寝は何分・何時まで? 昼すぎの眠気と上手な休み方
午後の会議や読書で少し眠くなることは、睡眠不足だけでなく、一日の眠りやすさの変化でも起こります。まず昼すぎの眠気の仕組みを知り、そのうえで昼寝の取り方を考えましょう。
昼すぎの眠気、アフタヌーンディップとは
昼すぎには、昼食をとらなくても眠りやすくなる時間帯があります。アフタヌーンディップと呼ばれ、体内時計の働きも関わります。起きている間に増す睡眠圧と、時刻によって変わる覚醒の働きを、下の図で重ねて見てみましょう。
昼すぎに眠りやすさが高まり、夕方には覚醒の働きが強まることがあります。図の線の高さや開きは眠気の実測値ではなく、午後の眠気を2本の線の単純な引き算だけで説明できるわけでもありません。睡眠不足・薬・食事なども影響します。
日中に働き、夜に眠る成人の昼寝
短く休む
まずは15〜20分程度を目安に、アラームを使って短く休む方法があります。眠れなくても、無理に寝つこうとせず休憩として過ごします。
午後の早い時間に
夕方以降や長時間の昼寝は、夜の寝つきを妨げることがあります。「何時まで」を全員に固定するより、普段の就寝時刻と夜の眠りへの影響を見ます。
起きた直後に余裕を
仮眠の後は、しばらく頭が働きにくい「睡眠慣性」が出ることがあります。眠気が残る間は、運転や危険な作業を始めないでください。
昼寝は、毎晩の睡眠を削るための代わりにはなりません。寝不足が続く場合は、まず夜に眠る時間を確保します。
夜に眠れない方・夜勤の方は分けて考える
不眠がある方は、昼寝で夜の眠気が弱まることがあるため、短くする・控えることも含めて相談します。CBT-Iに取り組んでいる方は、担当者と決めた方針を優先してください。夜勤中の仮眠は目的と時刻が異なります。下の夜勤・交替勤務の節で勤務表や安全面と合わせて考えます。
昼寝だけで済ませず、相談したい眠気
十分に眠っても寝落ちが続く、会議・授業・運転中に眠る、いびきや呼吸停止を指摘される場合は、生理的な眠気だけと決めつけないでください。強い眠気があるときは運転を控え、原因を相談しましょう。
夜勤・交替勤務|本人の工夫だけで抱えない
夜勤明けに帰宅しても、明るさや騒音、家族の生活で眠りが途切れることがあります。日勤と夜勤が切り替わる勤務では、毎日同じ時刻に眠ること自体が難しくなります。勤務表と実際に眠れた時間を並べると、どの勤務で不足が強いかを共有できます。
昼間に休むときの遮光や静けさ、連絡を控えてもらう時間、家族との分担を具体的に決めます。仮眠が可能な職場では、その取り方も職場の規定や安全面を踏まえて相談します。仮眠の直後はすぐに調子が戻らず、ぼんやりすることがある点にも注意が必要です。
強い眠気のある帰宅時は、カフェインや窓開けだけに頼って運転しないでください。休憩や別の交通手段、勤務調整を含めて考えます。眠気によるミスやヒヤリとした経験は、個人の意志の問題にせず、産業医や職場に相談する重要な情報です。
貧血・気分・月経の変化なども、一緒に伝える
休養感が乏しい背景には、睡眠障害だけでなく、痛み、息苦しさ、気分の落ち込み、薬の影響などが関わることがあります。強いだるさに動悸や息切れが伴う、月経量が多い、体重や寒さ・暑さの感じ方が変わった場合は、内科や婦人科での確認も考えます。
不安や気分の落ち込みと不眠は互いに影響し合うことがあります。眠れないことだけでなく、楽しめなくなった、食事がとれない、仕事や対人関係が保てないといった変化も伝えてください。睡眠だけを整えればすべて解決すると考えず、必要な支援につなげます。
月経前に眠気や不眠、いらいらが繰り返し、月経が始まると軽くなる場合はPMSの相談もできます。周期に合うかを記録する一方、周期に関係なく続く症状も見落とさないようにします。女性のページでは、PMS、鉄不足とRLS、妊娠・更年期をそれぞれ詳しく説明しています。
月経前の眠気・不眠とPMSについて読む →
眠気覚ましと寝酒|一日の飲み方を振り返る
朝のコーヒーだけでなく、夕方のエナジードリンク、濃いお茶、就寝前の飲酒まで、一日を通して確認してみます。カフェインの効き方には個人差があり、遅い時間の摂取が寝つきや眠りに影響することがあります。製品によって量が違うため、本数だけでなく表示も手がかりになります。
寝酒で寝つけたと感じても、夜中に目が覚めたり睡眠時の呼吸が悪化したりすることがあります。眠れないから酒を増やし、翌朝の眠気をカフェインでしのぐ循環になっていないかを確かめます。減酒が難しい場合も、医療機関で相談できます。
市販の鼻炎薬やかぜ薬を含め、薬で眠気が出る場合もあります。処方薬の眠気が気になるときは、自己中止せず服用時刻と困る場面を医師・薬剤師へ伝えます。睡眠薬を飲んでいる場合の運転は、薬ごとの注意事項を必ず確認してください。
一週間で一つだけ変えるなら
まず2〜3日、いつ眠る機会があって実際にはどう過ごしたかを簡単に書きます。そのうえで、寝る直前の仕事を切り上げる、遅い時間のカフェインを避ける、家事を分担するなど、負担を減らせる変更を一つ選びます。うまくできなかった日は、意志の弱さより予定や環境を見直します。

次に見直すのは、どこ?
生活の制約も、診察で伝えてよい情報です。
- 眠る時間が足りない仕事・家事・通勤から、休む機会を確保
- 時間はあるのに眠れない寝つき・目覚め・焦りを伝えて相談
- 眠っても、強い眠気が続くいびき・呼吸・脚の症状・薬も確認
- 勤務で時刻がそろわない勤務表と睡眠日誌を、職場や医療機関へ
強い眠気があるときは、運転を控えてください。
朝の休めた感じだけでなく、日中に寝落ちする回数、仕事のしやすさ、休日の睡眠の伸びなども見ます。一週間で必ず改善するという期間ではありませんが、次に何を相談したいかを整理する機会になります。
いびき・呼吸停止や強い眠気、続く不眠がある場合は、生活を完全に整えてから受診する必要はありません。使っている薬、勤務表、簡単な睡眠の記録を持ち、今の制約も含めて相談しましょう。13〜17歳の方の必要な睡眠時間は成人の目安と異なります。学校生活と眠りのページも参照してください。
中高生の睡眠時間・学校生活と眠り →
「休めた感じ」は、研究ではどう調べられている?
ガイドが引用している研究から、睡眠休養感を確認する意味を見てみましょう。いずれも観察研究で、休養感を改善する治療の効果を直接比べた試験ではありません。
研究の数値を自分の将来に当てはめるより、次のように普段の眠りと不調を記録すると、相談につなげやすくなります。
一週間、眠りと朝の調子を並べてみる
就床・起床時刻、実際に眠ったと思う時間、昼寝、朝の休めた感覚、日中の眠気を簡単に記録します。飲酒や遅い時間のカフェイン、残業なども添えると、調子との関係を相談しやすくなります。
記録は毎日正確に測ることより、繰り返す傾向を見つけるために使います。腕時計型の機器の点数だけで眠りの良し悪しを決めず、自分の困りごとも一緒に残しましょう。
眠る機会が足りない日
帰宅から就寝までを書き出し、明日に回せる家事や、分担できる作業を一つ選びます。勤務が原因なら、勤務表と眠る時刻を産業医などに見せて相談します。
時間はあるのに休めない日
いびき、目覚め、脚の不快感、痛みなどを添えます。休養感が低いという記録に、原因を考える手がかりを加えましょう。
睡眠の質は、機器の点数だけで決まりますか?
腕時計やアプリの睡眠段階は、動きなどから推定したものです。深い睡眠の割合や点数だけで診断せず、眠る時間、休めた感覚、日中の困りごとを合わせて確認します。記録は診察で生活の傾向を伝える助けになります。
眠気や疲れが続くときの相談先
いびき・呼吸停止、十分眠っても続く強い眠気、眠れないことによる日中の支障があれば、かかりつけ医や睡眠外来へ。薬、痛み、気分の落ち込みなども伝えてください。
強い眠気があるときは運転を控え、原因を相談しましょう。
出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」成人版(冊子11〜14頁)、交替制勤務(42〜43頁)
参考文献・出典
本記事は一般的な情報提供を目的としています。症状や持病に合う対策、薬の変更は担当の医師にご相談ください。
下浦 雄大
日本睡眠学会認定 総合専門医
日本医師会認定 産業医
RESM新東京スリープメディカルケアクリニック
副院長
📋 この記事の執筆者はコチラ
睡眠専門医が、あなたの「眠れない」に答えます。
山梨大学医学部卒業後、循環器内科での臨床経験を経て睡眠医療へ転身。現在はRESM新東京スリープメディカルケアクリニック副院長として、睡眠・循環器・産業医の3領域で診療中。一般クリニックでは対応困難な「過眠症」や「概日リズム睡眠障害」まで、科学的根拠にもとづいた支援を行っています。
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RESM新東京スリープメディカルケアクリニック 副院長 下浦 雄大 | 日本睡眠学会認定総合専門医 日本医師会認定産業医