CKDと睡眠時無呼吸|腎臓と夜の呼吸を診る

腎臓病と睡眠時無呼吸|CKDと夜の呼吸の関係

腎臓の病気で通院しながら、いびきや眠気、夜の目覚めに困っていませんか。血圧や体液の状態は、夜の呼吸にも関わります。腎臓の治療と無呼吸の治療を並行するときに知っておきたいことを整理します。

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睡眠時無呼吸症候群の詳しい説明へ →

腎臓の診察で、眠りのことも伝えてよい?

イチ坊
腎臓の数値以外に、夜の様子も聞いておくんですね。
下浦
そうだよ。いびきだけでなく、脚のむずむずやかゆみなども眠りに関わるから、困っていることから聞いていこう。

眠りにくさの原因は、症状と今の治療を合わせて調べます。

CKDは慢性腎臓病のことで、腎臓の働きの低下や、尿蛋白などの腎臓の異常が続いている状態を指します。血液や尿の検査で見つかることもあり、症状が少ない段階から通院を続けている方もいます。糖尿病や高血圧と一緒に管理する場合もあります。

眠りの相談は、検査値とは別の話に感じるかもしれません。それでも「家族からいびきを指摘された」「何度も目が覚める」「昼間の眠気で困る」といったことは、日常生活を支えるための大切な情報です。腎臓の診察で相談してよい内容です。

CKDの方の眠りにくさには、無呼吸のほか、脚のむずむず、かゆみ、痛み、生活時間や透析の日程など、複数の要因が関わることがあります。まず困っている場面を伺い、原因に応じた調べ方を選びます。すべてを腎臓のせい、あるいは無呼吸のせいと決めつけません。

脚にたまった体液の移動や酸素低下が腎臓と夜の呼吸に関わる様子

体液や血圧が、夜の呼吸にも関わる

イチ坊
夕方の脚のむくみも、睡眠の問診に関係するんですか?
下浦
関係する場合があるよ。横になると体液が上半身へ移り、のどの周囲が狭くなることがあるんだ。

腎臓の状態と夜の呼吸には、体液や血圧を通じたつながりがあります。

CKDと睡眠時無呼吸は併存しやすいことが報告されています。高血圧、糖尿病、肥満など、両方に関係する背景があることに加え、体液の状態や睡眠中の酸素の変化なども研究されています。

腎臓の働きが低下すると、体液がたまりやすくなる方がいます。日中に脚などにたまった体液が、横になった際に上半身へ移動すると、喉の周囲の状態に影響して呼吸の通り道を狭くすることがあります。心臓の病気の合併も含めて確認する必要があります。

反対に、無呼吸による酸素低下や自律神経の刺激は、血圧や血管の働きに影響します。こうした夜間の変化が腎臓に及ぼす影響が研究されています。ただし、ある人の腎機能低下の原因が無呼吸だと、関連だけから決めることはできません。

CPAPで呼吸を整え、腎臓の治療も続ける

イチ坊
口が乾くなら、まず水をたくさん飲むよう伝えますか?
下浦
そこは待ってね。水分の調整が必要な方もいる。マスクの空気漏れや加湿も確認して、担当医と相談するんだ。

水分・食事・薬の調整は、腎臓の担当医の方針に沿って行います。

CPAPは、マスクを通して空気を送り、眠っている間の喉の通り道を保ちます。閉塞性睡眠時無呼吸がある方で、呼吸の乱れや、それに伴う酸素低下を抑えるために使います。眠気や睡眠に伴う生活の困りごとの改善も大切な治療目標です。

一方、CKDの進行を抑えるために、血圧や糖尿病の管理、薬、食事などの腎臓の治療は引き続き重要です。腎臓の治療とCPAPを並行して続け、それぞれの効果を確認します。腎臓と睡眠それぞれの目標を確認すると、治療を続ける理由が分かりやすくなります。

鼻や口の乾き、マスクの漏れ、途中で外してしまうことがあればお伝えください。CKDで水分について指示を受けている方は、乾燥への対応として自己判断で水分を大きく増やすのではなく、加湿やマスク調整を含めて相談します。

腎臓についての研究

糖尿病性腎臓病と睡眠時無呼吸がある185人を52週間調べた無作為化試験では、CPAPを追加する群と通常診療のみの群を比較しました。割り付けられた全体では尿アルブミンの変化に明確な差はありませんでしたが、あらかじめ決めた使用状況などの条件を満たした人の解析では、CPAP群に改善がみられました。

所定の使用条件を満たした人に絞った解析では、比較する人の背景も変わる点に注意が必要です。「使えば必ず腎臓がよくなる」とは約束せず、続けやすい治療を支えながら研究の進展も確認していきます。無呼吸の治療で得られる呼吸や生活への効果と、腎臓の長期的な効果を分けて考えます。

腎臓の診療とCPAP管理を並行し、普段の記録を確認する様子

腎機能が低下したとき、眠りの薬はどう調整する?

イチ坊
脚のむずむずの薬も、腎臓の検査値と一緒に確認するんですね。
下浦
そうだよ。腎臓から出ていく薬は、腎機能が下がると体に残りやすくなる。薬の種類と使う目的に合わせて、量や使い方を確認しよう。

腎機能が低下していても、不眠や脚のむずむずを治療する方法はあります。ここで確認するのは主に「腎臓の働きが薬の効き方に及ぼす影響」です。「その薬が腎臓を傷める」という話とは区別します。

プラミペキソール(ビ・シフロールなど)やガバペンチン エナカルビル(レグナイト)は、腎機能の確認が特に大切です。一方、オレキシン受容体拮抗薬(ORA)は主に肝臓で代謝され、Ccrに応じた減量の数値が設定されていない薬もあります。ただしデエビゴは、重度の腎機能低下で血中濃度が上がる点に注意します。

ベンゾジアゼピン系も、一律に「腎機能の影響が小さい」とは扱いません。成分ごとの注意に加え、翌日の眠気、ふらつき、呼吸の状態、ほかの薬との組み合わせを確認します。眠りの薬を始めた後に変化があれば、処方医や薬剤師へお伝えください。

Ccr別の確認表:むずむず脚の薬

Ccr(クレアチニンクリアランス)は、腎臓が血液から物質を除く働きの指標です。下表の単位はmL/minです。検査票によく載る体表面積補正eGFR(mL/min/1.73m²)と、そのまま同じ数値として扱うことはできません。

成人の特発性レストレスレッグス症候群(RLS)に対する記載です。CKDに伴う二次性RLSでは適応を別途確認します。プラミペキソールのパーキンソン病用の投与表や徐放製剤とは異なります。

薬ごとに異なる減量・慎重な判断・禁忌
薬Ccr添付文書に基づく確認点
プラミペキソール
ビ・シフロールなど
20以上RLSの承認用量内では、腎機能を理由とする減量は不要とされます。ただし少量から開始し、眠気などを観察します。
同上20未満、または透析中投与の可否を慎重に判断。有効性・安全性が確立していません。腎機能だけを理由とする「禁忌」とは記載されていません。
ガバペンチン エナカルビル
レグナイト
90以上通常、1日1回600mgを夕食後。症状に応じた調整は処方医が行います。
同上60以上90未満1日1回300mg。最大600mgまでですが、増量は副作用を観察しながら慎重に行います。
同上30以上60未満1日1回300mg。活性代謝物のガバペンチンが体内に残りやすくなります。
同上30未満禁忌(使用しない)。活性代謝物の血中濃度が高くなるおそれがあります。

プラミペキソールでは突然眠り込むことがあるため、服用中の自動車運転などは避けます。脚の症状が以前より早い時間から出る、範囲が広がるときも、自己判断で増量せず相談してください。

薬別の確認表:オレキシン受容体拮抗薬・ベンゾジアゼピン系

下記の薬には、添付文書上、Ccr別の具体的な減量表はありません。「数値区分がない」ことと「どの腎機能でも注意不要」は異なります。透析中の使用についても、非透析患者の試験からそのまま判断しません。

一般名・商品名腎機能に関する記載確認すること
スボレキサント
ベルソムラ
Ccr別の減量・腎機能による禁忌の設定なし重度腎機能障害の試験で血中曝露量(AUC)は約22%増加。併用薬や眠気も確認します。
レンボレキサント
デエビゴ
重度腎機能障害では血中濃度上昇に注意。Ccr別の減量表はなしeGFR 15~29 mL/min/1.73m²の試験でAUCは約1.5倍。これはCcrの区分ではありません。
ダリドレキサント
クービビック
Ccr別の減量・腎機能による禁忌の設定なしCcr 30未満の試験でAUCは約1.16倍。肝機能や相互作用による用量制限は別に確認します。
ボルノレキサント
ボルズィ
Ccr別の減量・腎機能による禁忌の設定なし主に肝臓で代謝されます。添付文書に腎機能別の試験成績の記載がないことを、安全性の保証とは扱いません。
トリアゾラム
ハルシオン
Ccr別の具体的な減量表なし少量から開始する薬です。翌日の眠気、健忘、ふらつきや、呼吸機能・併用薬を確認します。
ブロチゾラム
ブロチゾラム錠「トーワ」など
腎機能障害では代謝・排泄が遅れるおそれ。Ccr別の具体的な減量表はなし薬の作用の持ち越し、眠気、ふらつきなどを確認します。

AUCは、一定の時間に体が薬にさらされる量の指標です。異なる薬の倍率を並べて、効果や安全性の順位をつけることはできません。ここでは腎機能に関する事項を抜粋しており、肝機能、妊娠、相互作用など、別の理由による禁忌・制限は各薬の添付文書で確認します。

最近の腎機能の結果とお薬手帳を一緒に確認すると、眠りの治療を選びやすくなります。表だけで薬を中止・増減せず、効き方や困っている症状を処方医に伝えて相談しましょう。

薬剤情報の確認:2026年10月5日。出典は末尾の「参考文献・出典」に掲載しています。

検査と通院は、いつもの記録を生かして

スイくん
受診用に記録ノートをもう一冊作ってもらいますか?
下浦
増やしすぎなくていいよ。いつもの血圧や体重の記録に、気づいた眠りの変化を添えてもらおう。

手元の検査結果・薬・血圧や体重の記録を、診療に生かします。

初診では、いびきや眠気、睡眠時間に加え、腎臓の病気の経過、糖尿病や心臓の病気の有無、現在の薬を確認します。最近の血液・尿検査の結果が手元にあれば、実施日が分かるものをお持ちください。すべての結果を集め直してからでなくても、まず相談できます。

睡眠の検査には、自宅で呼吸などを記録する簡易検査と、脳波や呼吸努力なども記録するPSGがあります。心不全を併せ持つ方や、中枢性無呼吸なども疑う方では、施設での詳しい検査が適する場合があります。腎機能の数値だけで検査方法が一律に決まるわけではありません。

透析を受けている方は、その曜日や時間、夜の眠りとの関係もお伝えください。検査を受けやすい日程と、普段の状態をどのように記録するかを相談します。透析や利尿薬などの予定を、睡眠検査のために自己判断で変える必要はありません。

腎臓の通院で使っている血圧手帳や体重の記録があれば、それを活用できます。新しい記録を何種類も作るより、「眠気が減った」「夜中の目覚めが続く」「マスクが乾く」など、前回から変わった点を書き添えると診察につながります。

受診時には「腎臓の先生には血圧と検査値、睡眠外来には夜の呼吸と機器のこと」というように、相談先を確認しておきましょう。必要な情報を共有しながら、無理なく続けられる治療を支えていきます。

腎臓の治療を続けながら、夜の呼吸と日中の過ごしやすさも確かめていきましょう。気になるいびきや眠気があれば、普段の診察でお話しください。

参考文献・出典

本記事は一般的な情報提供を目的としています。検査・治療の選択や薬の変更は、症状や持病に応じて担当医にご相談ください。

下浦雄大

下浦 雄大

日本睡眠学会認定 総合専門医
日本医師会認定 産業医

RESM新東京スリープメディカルケアクリニック
副院長

📋 この記事の執筆者はコチラ

睡眠専門医が、あなたの「眠れない」に答えます。

山梨大学医学部卒業後、循環器内科での臨床経験を経て睡眠医療へ転身。現在はRESM新東京スリープメディカルケアクリニック副院長として、睡眠・循環器・産業医の3領域で診療中。いびき・睡眠時無呼吸や不眠症に加えて、「過眠症」や「概日リズム睡眠障害」の診療にも、科学的根拠にもとづいて取り組んでいます。


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RESM新東京スリープメディカルケアクリニック 副院長 下浦 雄大 | 日本睡眠学会認定総合専門医  日本医師会認定産業医

いびき・睡眠クリニック武蔵小杉|2027年春ころ開院予定

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