睡眠時無呼吸のマウスピース|保険と自費・費用

睡眠時無呼吸のマウスピース|保険・自費・費用の違い

TREATMENT / 睡眠時無呼吸の治療

「マウスピースで無呼吸を治療できる?」「保険と自費では何が違う?」。睡眠時無呼吸のマウスピースは、睡眠検査の結果と歯・あごの状態を確かめて、歯科で一人ひとりに合わせて作ります。費用、通院の回数、紹介に必要な資料を順にご案内します。

上下の歯列に合わせて作る睡眠時無呼吸用マウスピース

このページの目次

参考文献・出典

マウスピースは、下あごを前に支える治療

口腔内装置(OA)は、眠っている間に下あごを少し前へ保ち、舌などがのどをふさぎにくくする治療です。いびきや、気道が狭くなる「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」の改善を目指します。歯ぎしり用のナイトガードとは、働き方と作る目的が異なります。

睡眠中に舌根(舌の付け根)が後方へ落ち込むと、のどの空気の通り道が狭くなることがあります。OAで下あごを前方に保つと、舌根も前方へ引かれ、舌の後ろの気道を確保しやすくなります。

左は舌根沈下で気道が閉塞した状態。右はマウスピースで下顎を前方に保ち、舌の後ろの気道が広がった状態。
左:舌根沈下で気道が閉塞した状態。右:OAで下あごを前方に保ち、舌の後ろの気道を確保した状態。比較図を拡大する

CPAPは空気の圧力で気道を保ちますが、OAはあごの位置を支える装置です。気道の広がり方や治療効果には個人差があり、装着後の睡眠検査で効果を確認します。

軽症〜中等症のOSAや、CPAPを使い続けることが難しい方などで検討します。重症の方ではCPAPを優先して相談することが多く、あごの形、歯の支え、睡眠検査の結果を合わせて選びます。装置を選ぶ前に、無呼吸の有無と程度を検査で確認することが大切です。

保険のスリープスプリントと、ソムノデント

「スリープスプリント」は、睡眠時無呼吸に使う歯科製作の装置を指す呼び方です。このページでは、保険診療で作る装置と、自費診療のソムノデントを比較します。

保険診療

スリープスプリント

上下の歯列を一体に支えるスリープスプリント

上下の歯列に合わせ、下あごを前へ支えるように製作します。上下一体型が広く使われていますが、構造や材料は歯科医院によって異なります。

  • 医科での診断と、歯科への治療依頼が保険適用の前提です。
  • 保険の製作料は、材料・製作方法による区分で決まります。
  • 一体型は装着中の口の開閉が制限されます。あごの位置を変える際の方法も装置によって異なります。

自費診療

ソムノデント

ソムノデントFLEX型の上下分離した装置と側面の調整機構

画像はFLEX型。AVANTなどは調整機構が異なります。

SomnoMed社の個別製作の口腔内装置シリーズです。上下分離型を基本とし、下あごの位置を段階的に調整する仕組みや、内側のクッション材を備えています。

  • FLEX:スクリューで下あごの位置を調整。
  • AVANT:CAD/CAMで設計・削り出し製作。専用ストラップで位置を調整。
  • FUSION:交換可能なウィングとスクリューで位置を調整。

メーカー公式の製品説明に基づく特徴です。扱う機種や調整方法は紹介先で確認します。

費用の差だけで、無呼吸への効果が決まるわけではありません。装着感、調整のしやすさ、歯やあごの状態、続けて使えるかを歯科医師と相談し、治療効果は装着した状態の睡眠検査で確かめます。

イチ坊
紹介するときは、高い装置ほど無呼吸がよく治る、と説明していいですか?
下浦
そこは値札だけで決められないよ。装着感や調整方法には違いがあるけれど、合う装置を選んで、使ったときの呼吸を検査で確認することが大事なんだ。

費用はどれくらい? 3割負担と自費の比較

保険診療は負担割合に応じた自己負担、自費診療は全額自己負担です。ソムノデントの自費料金に「3割負担」は適用されません。

保険:歯科で約1万〜1万5,000円が目安

3割負担で、歯科の診察・製作などを含めた参考目安です。製作方法、撮影・処置、調整回数で変わります。むし歯・歯周病の治療、医科の睡眠検査・紹介状の費用は別にかかります。

2026年度の装置の製作料だけを計算すると、次のとおりです。

アクリリック樹脂による装置:3,000点
医療費30,000円 → 3割負担9,000円
熱可塑性樹脂シート等による装置:2,000点
医療費20,000円 → 3割負担6,000円

1点=10円で計算。初診・再診、歯型・かみ合わせの採取、装着、必要な調整等は別途算定されるため、6,000円/9,000円が支払総額ではありません。

自費:約16万〜20万円が一つの目安

ソムノデントは、約16万〜20万円(税込)が参考目安です。公開料金の一例に基づく目安で、紹介先の見積額や全国一律の料金ではありません。機種・診療内容によって、この範囲を超える場合もあります。

歯型採取、受取り後の調整、定期管理などが含まれるかを紹介先で確認してください。

メーカーは、患者向け費用は歯科医院へ確認するよう案内しています。

費用・制度の確認日:2026年10月7日。公開料金の改定や診療内容により変わります。自費の調整・再製作・修理がどこまで含まれるかは医院ごとに異なります。

見積もりでは、ここまで確認しましょう

  • 初診、歯型・かみ合わせの採取、装置の代金を含む総額
  • 受取り後の調整・定期チェックの料金
  • 修理・再製作・保証の条件
  • 医科での睡眠検査や紹介状の費用が別にかかること

歯科へ紹介する前に、睡眠検査の結果をそろえる

いびきの音だけでは、無呼吸の有無や重症度は分かりません。まず医科で診察を受け、簡易検査(HSAT)やPSGなどで睡眠中の呼吸を評価します。簡易検査が陰性・軽症でも症状から疑われる場合などは、追加の検査を検討します。

保険診療での装置製作には、医科の担当医から歯科への診療情報提供に基づく治療依頼が必要です。紹介状には診断と治療方針を記載し、無呼吸の程度や酸素の低下などが分かる睡眠検査の結果を添えて歯科医院へ紹介します。すでに他院で検査を受けている方は、結果をお持ちください。再検査が必要かは医師が確認します。

  • 紹介状(診療情報提供書):OSAの診断、装置製作の依頼、持病・服薬、CPAPの使用経過など
  • 検査結果:検査日・方法、AHI/REI(呼吸の乱れの回数)、酸素飽和度、必要に応じて体位別の所見など
  • 歯科で確認すること:歯の本数と支え、歯周病・むし歯、あごの痛みや動かせる範囲、製作できる装置

自費の装置を希望する場合も、OSA治療としては医科と歯科が検査結果を共有し、使い始めた後の評価までつなげることが大切です。紹介状・検査結果のほかに必要な書類は、紹介先へ確認します。

歯型はどう取る? 通院は何回くらい?

歯型は、専用のトレーに印象材を入れて上下の歯の形を写し取る方法が一般的です。医院・装置によっては、口腔内スキャナーで歯を撮影し、立体データを作る方法にも対応します。ソムノデントAVANTの公式説明では、スキャンデータと歯の模型の両方を用いる製造工程が案内されています。

さらに、下あごを前へ動かした位置でかみ合わせの記録を取ります。「歯の形」だけでなく、「どの位置で支えるか」も治療に関わります。型取りで吐き気が出やすい方は、予約時に歯科へ伝えてください。

歯科での製作・受取りは、おおむね2〜3回を目安に、その後の調整が加わります。医院によっては初診と型取りを分けるなど、回数が増えます。ソムノデントも2〜3回程度の製作工程を案内する医院があり、製作期間は約2〜4週間が一つの参考です。保険・自費とも、歯周病やむし歯の治療、追加の調整が必要ならさらに通院します。

この回数には、医科での診察・睡眠検査・結果説明と、装着後の効果判定は含みません。

STEP 01

医科での診察・検査

医師と睡眠の記録を確認する診察の場面

医科:診察・検査と歯科への紹介

いびき・呼吸の停止・眠気を確認し、必要な睡眠検査で評価。マウスピースが選択肢となる場合に歯科へ紹介します。

STEP 02

歯科の初診と歯型採取

紹介先の歯科で、歯型採取のトレーと上下の歯の模型を確認する場面

紹介先の歯科:診査・歯型採取

歯・歯ぐき・あごを診査し、上下の歯の形と、下あごを前へ出した位置を記録します。歯型採取を初診と別日に行う場合もあります。

STEP 03

試適・受取り・使い方の確認

歯科医師が上下の歯に合わせるマウスピースを示し、使い方を説明する場面

紹介先の歯科:試適・装着とお手入れの説明

完成した装置をお口に合わせ、当たりや保持、あごの位置を調整。装着・取り外し・洗い方を確認します。一体型では仮止めの確認を別日に行うことがあります。

STEP 04

使用後の調整と効果の検査

医師と装着後の睡眠検査結果を確認する場面

歯科での調整・医科での効果確認

使い心地やあご・歯の変化を歯科で確認し、適切な位置へ調整。医科では装置をつけた状態の睡眠検査で無呼吸が改善したかを確かめます。

通院回数・期間は各歯科医院の公開案内をもとにした目安です。紹介先の予約、製作方法、お口の状態で変わります。

受け取った後も、調整と睡眠検査を続ける

あごの痛み、歯の痛み、唾液の増加、口の乾き、かみ合わせの変化がみられることがあります。痛みが続く、食べにくい、装置が外れる・壊れるときは、歯科へ連絡してください。位置を自己判断で大きく変えたり、削ったりせずに調整を受けます。

いびきが静かになったことと、無呼吸が十分に改善したことは別です。歯科で装着と位置を整えた後、医科で装置をつけた状態の睡眠検査を行い、呼吸と酸素の低下を確認します。検査方法・時期は医師がご案内します。

CPAPから変更する場合は、代わりの治療で十分な効果が得られるかを担当医と確認して進めます。効果が不十分な場合も、再調整やほかの治療を相談できます。歯科と医科の定期的な確認を続けましょう。

よくある質問

いびきだけでも保険で作れますか?

保険の口腔内装置は、睡眠時無呼吸症候群の診断と医科からの治療依頼が前提です。単純ないびきだけの場合は、自費になることがあります。まず無呼吸がないかを確認します。

ソムノデントなら、歯型を取らずに作れますか?

スキャナーを使う場合も、歯の形のデータは必要です。どの機種でスキャンに対応するか、型取りとどちらを使うかは歯科で確認してください。

作った後の検査も、歯科で受けますか?

歯科は装置の適合・あごの位置・歯やかみ合わせを確認し、医科は装着した状態の睡眠中の呼吸を評価します。両方の結果を共有して治療を続けます。

マウスピースを検討するときは、いびき・無呼吸の相談から始め、検査結果をそろえて歯科へつなぎます。保険と自費の特徴、通院予定、調整を含む費用を確認し、使い続けられる治療を選びましょう。

参考文献・出典

制度・費用の確認日:2026年10月7日。料金は参考目安です。実際の総額は紹介先で確認してください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療上のアドバイスではありません。診断・治療や装置の選択については、担当の医師・歯科医師にご相談ください。

下浦雄大

下浦 雄大

日本睡眠学会認定 総合専門医
日本医師会認定 産業医

RESM新東京スリープメディカルケアクリニック
副院長

📋 この記事の執筆者はコチラ

睡眠専門医が、あなたの「眠れない」に答えます。

山梨大学医学部卒業後、循環器内科での臨床経験を経て睡眠医療へ転身。現在はRESM新東京スリープメディカルケアクリニック副院長として、睡眠・循環器・産業医の3領域で診療中。いびき・睡眠時無呼吸や不眠症に加えて、「過眠症」や「概日リズム睡眠障害」の診療にも、科学的根拠にもとづいて取り組んでいます。


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RESM新東京スリープメディカルケアクリニック 副院長 下浦 雄大 | 日本睡眠学会認定総合専門医  日本医師会認定産業医

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